はじめに

6月の株式市場では、クラウドで名刺管理サービスを展開するSansan(証券コード:4443)の新規上場が注目を集めました。

クラウドサービスとは、ソフトウェアやハードウェアなどのITインフラを、インターネット経由で利用できる仕組みのことです。より安い運用コストでITインフラを利用できるようになり、業務効率を高められることから、クラウドサービスを利用する企業が増えています。

そこで今回は、拡大傾向にあるクラウドサービスと関連企業の中から有望株を探してみたいと思います。


クラウドサービスを利用する企業が増加

従前、企業がITを導入する時は、サーバーなどの高価なハードウェアやソフトウェアを購入し、“所有”する必要がありました。しかし、クラウドでは、サービスの利用量に見合った料金(通常は月額料金と従量課金の併用)を支払うことで、ソフトウェアやコンテンツのほか、高度なIT環境によるデータの計算・保存・管理などが“利用”できるようになります。

野村総合研究所によると、国内のクラウドサービス市場は2018年度の8,500億円弱から2024年度には約2.4兆円へ拡大する見通しです。クラウドサービスは業務の効率化に役立つことから、「働き方改革」や人手不足の問題に取り組んでいる企業の利用が増え、今後も市場が広がる可能性が高いでしょう。

クラウドサービスの市場規模
市場規模は右肩上がり

また、新しい製品やサービスを開発するために、IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)などを活用してビッグデータを解析する需要が増えています。このことも、低コストで高度なIT環境の利用を可能とするクラウドサービスへの需要を高める要因になりそうです。

SaaS型サービスも成長しそう

SaaS(サース)は「Software as a Service」の頭文字を合わせた言葉で、インターネット経由でソフトウェアやコンテンツのサービスを提供するクラウドサービスのことです。

具体例としては、企業向けでは財務会計ソフトやセキュリティソフトなど、個人向けではSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)や動画配信サービスなどが挙げられます。SaaSはソフトウェアやコンテンツの新しい販売方法として注目されています。

今後普及が予想されているクラウドゲームを含め、インターネットサービスや企業の業務システムでの活用範囲が広がることで、SaaS型サービスが中期的に成長を続ける可能性は高いと考えられます。関連企業に注目しておく必要があるでしょう。

注目したい企業は?

クラウドサービスに関連する企業としては、クラウドサービスの総合的なサービスを提供しているNTTデータのほか、クラウドサービスに必要なネットワーク構築を行っている伊藤忠テクノソリューションズ(4739)やネットワンシステムズ(7518)、セキュリティ関連のデジタルアーツ(2326)やラック(3857)などが注目と考えます。

SaaS型サービスでは、クラウドで産業機械のマニュアル制作・管理システムを提供しているグレイステクノロジー(6541)、ビッグデータの計算を高速化するソフトを提供するフィックスターズ(3687)、クラウド型のPOSレジを提供するスマレジ(4431)、クラウドでオンラインゲームを提供するソニー(6758)などのゲーム関連企業が注目企業とみています。

<文:投資調査部 川崎朝映>

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