はじめに
訪日外国人旅行者は増加の一途をたどり、オリンピックも控えた国内はますます多くの旅人が行き交っています。そのような中で、旅のベースであるホテルがいま大いに注目されています。ラグジュアリー(豪華)なホテルからリーズナブル(安価)なホテルまで、嗜好の多様化に呼応するかのように様々なスタイルのホテルが誕生していますが、業界では顧客の獲得に熾烈な競争が展開されています。
注目されるホテルを作る際、“差別化”は大切なテーマといえますが、差別化戦略のひとつに宿泊者向けの「無料サービスの提供」があります。無料サービスとはいえ、終局的には宿泊料金に転嫁されているものの、こうしたホテルのトライには目を見張るものがあります。これから、ラグジュアリーからリーズナブルまで、ゲストを惹きつけるホテルの無料サービスについて紹介します(※ここでいう無料サービスとは別途料金無しで宿泊者が利用できるサービスを指します)。
まず、今回は「ビジネスホテルの無料朝食」についてとりあげます。
もはや定番! ビジネスホテルの無料朝食
宿泊施設のカテゴリーで最も勢いがあるビジネスホテル。業界では宿泊特化型ホテルとも言われていますが、その名の通り宿泊に特化したホテルです。ホテルといえば、料飲(レストランなど)やバンケット(宴会、婚礼など)といった多彩なサービスを提供する「フルサービス型」をイメージする人もいることでしょう。一方、ビジネスホテルではサービスが提供されるシーンは限られます。ゆえに、朝食で差別化を図ろうというビジネスホテルは増えており、朝食でホテルを選ぶという人もいます。
筆者はビジネスホテルを、一般的に利用しやすい料金帯の「ローコストタイプ」とローコストタイプと比較して広めの客室面積や付帯設備などが特徴的な「ハイクラスタイプ」にカテゴライズしています。よく知られた全国ブランドでいえば、ローコストタイプは「東横イン」「ルートイン」「スーパーホテル」など、ハイクラスタイプは「リッチモンドホテル」「ダイワロイネットホテル」「ドーミーイン」といったイメージでしょうか。最近では「ルートイングランディア」「スーパーホテルLohas」というように、従来のローコストタイプがハイクラスタイプの上級ブランドを手がけるケースも散見します。
筆者は、ビジネスホテルの無料朝食をテーマにした連載をしていたこともあり、全国約20都道府県60軒超のビジネスホテルで無料朝食を取材してきました。そこで見られた傾向としては、宿泊料金の高いハイクラスタイプが有料、ローコストタイプが無料というある種の逆転現象です(スーパーホテルの一部では、併設レストランでの有料朝食の形態もあります)。
ハイクラスタイプは有料だけど充実した内容が特徴で、ホテルのイメージに合うようなプレミアム感ある朝食を提供するという戦略が垣間見えます。一方、無料朝食を提供するホテル間でも競争は激化しており、ご飯にパン・デザート・煮物・揚げ物・焼き物など充実のラインナップのブッフェスタイル、ドリンクバーなど、これが本当に無料!? というシーンに遭遇します。
終日のコーヒーサービスも増加中
また、ハイクラスタイプ、ローコストタイプともに、テイクアウトコーヒーを無料でサービスするホテルも多く見かけるようになりました。こうしたホテルの中には、チェックイン時からチェックアウト時までフルタイムで無料のコーヒーサービスを提供するホテルもあります。ポットに入れられたタイプから本格的なマシンまで様々。コーヒー好きであれば、無料コーヒーをビジネスホテル選びの参考にしている人もいるのでは?
では、ここで筆者お気に入りの無料朝食ビジネスホテルを紹介したいと思います。全国チェーンは多様な情報が提供されていることに加え、多くの人が利用しているだろうことを考慮して割愛し、「独立系・小規模チェーン」に絞ることにします。