はじめに

最近、クリニックや病院の待合室、公共図書館などの家具が、木製で色合いもカラフルになって、以前に比べると格段にオシャレになったと感じたことはありませんか。実は、この変化には立役者がいます。

このような業務用のインテリア家具の分野で販売高日本一を誇る「オリバー」という会社です。愛知県岡崎市に本社を構えており、名古屋証券取引所の2部に上場しています。

必ずしも知名度の高くない同社が、なぜ業務用インテリア家具で日本一になれたのでしょうか。オリバーの歴史をひも解いてみます。


売上規模は大手の5分の1

本題に入る前に、まず国内の業務用家具の勢力図を整理しておきます。スチール家具を含めた、いわゆるオフィス家具にまで概念を広げると、年商1,345億円のオカムラと1,320億円のコクヨが国内2強。これを617億円のイトーキ、479億円の内田洋行が追う形になっています(いずれも公表済み直近本決算ベースでオフィス家具分野の売上高)。

これに対して、オリバーの年商は260億円で、そのうち業務用家具の売上高は239億円。ケーブルテレビ局事業も手掛けていて、残る20億円はその売上高です。

大手に比べると小ぶりと言わざるを得ませんが、こと木製を中心とする業務用インテリア家具の領域に限ると、オリバーが日本一なのだそうです。実はこの会社、首相官邸や京都迎賓館、洞爺湖サミットの会場となったホテルにも納入実績があります。

最近流行っている、ソファーブースがあったり、カフェカウンターがあったりする、コミュニケーションスペースを設けたオシャレでゆったりしたオフィス空間設計の先駆けでもあります。

世界各国からの仕入れ商品も扱っていますが、中心はオリジナル製品です。豊橋の自社工場で製造しているほか、協力工場に外注して製造しているものもあります。

中堅がインテリア家具で天下を取るまで

創業者の大川博美氏の経歴は実に変わっています。実家の農家を継いだものの、早々に断念し、中学の教師になるのですが、高度経済成長を目の当たりにして産業界への転身を決意。妻の親戚を頼って、業務用のスチール家具メーカーに就職しました。

ここで修行をして、業務用家具の卸売り業者として独立を果たしました。なぜ業務用だったかというと、家庭用は販路が確立していて新規参入が難しかったから。しかし、新しいことを取り入れるセンスは抜群だったようです。

創業5年目にヨーロッパの家具見本市を見て回り、イタリアからの輸入を始めたのが1972年。年間に出国する日本人は、今でこそ1,800万人強いますが、当時はまだ150万人程度という時代でしたから、かなり先進的だったといえます。

この会社の強みは、何といってもデザイン性の高さ。創業間もない時期に、欧州製家具の洗練されたデザインに触発されたことが原点になっているといえるでしょう。今では珍しくなくなりましたが、業界に先駆けて業務用家具のカタログ販売を始めたのもこの年。これがオリバーの飛躍のきっかけになったようです。

1988年にはニュージーランドの牧場を買収しているのですが、これはソファーの座面用の牛革の安定調達のため。マリリン・モンローがジョー・ディマジオとの新婚時代に愛用した天蓋付きのベッドをニューヨークのオークションで落札したのは、その翌年。今も岡崎本社のショールームに展示されています。

投資対象としての有望度は?

それでは、オリバーを投資対象として見た場合はどうでしょうか。

上場は1988年 6月で、上場から30年間で売上高は上場時の倍になりました。本業の儲けを示す営業利益は山あり谷ありでしたが、赤字になったことは一度もありません。

オリバー業績

最終損益は4回、赤字になったことがあるものの、このうち3回は投資有価証券の評価損を計上したための赤字。4回目の2008年10月期は、役員退職慰労引当金の繰り入れが原因で、キャッシュアウトを伴う損失ではありません。無配になった年も一度もありません。

キャッシュリッチで実質無借金。自己資本比率は6割を超える好財務体質。配当方針も2013年10月期までは安定配当でしたが、2014年10月期から業績連動に変わり、配当性向2割を目安とするようになりました。

さらに、今年3月には配当性向を3割に引き上げました。浮動株が極端に少ないので、簡単に買えない・売れないという辺りは難点ですが、20万円ちょっとで1単元が買える銘柄です。応援したい会社を探している個人投資家には、向いている銘柄かもしれません。

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