はじめに
ビールの飲みぶりも半端ではありません。試合前から飲んでラグビー談議に花を咲かせ、観戦中もビール。そして、試合後もレストランやコンビニエンスストアなどの前で一献傾けながら祝勝会や残念会を行い、ホテルへ帰る電車にもビール片手に乗り込んで気勢を上げる……。
これがアイルランド、イングランド、オーストラリア、ウェールズなど、パブの文化が根付くラグビー強豪国流の観戦スタイル、といっても過言ではないでしょう。オーストラリア対ウェールズ戦の取材からの帰途、乗車した京王線の車内には、破れたオーストラリアファンの高らかな歌声が響いていました。
オーストラリア戦に勝利して、祝杯を挙げるウェールズのファン
「ラグビーファンの1試合当たりのビールの消費量はサッカーファンの6倍」――。W杯の組織委員会は大会前、試合会場の各自治体などに品切れを起こなさないよう、注意喚起していました。海外からの観戦客の行動を見ると、「6倍」という数字も決して大げさではないように思えます。
スタジアム外でも広がる熱狂の渦
外国人ファンが足を運ぶのは、スタジアムだけではありません。全国の開催都市12の試合会場の近くに設置された入場無料のファンゾーンも人気のスポットです。大型のスクリーンが設けられて試合をライブ観戦できるほか、トップリーグの現役選手やかつての名プレーヤーらによるトークショーも開催されています。
日本対ロシア戦があった20日に東京スタジアムに近い東京・調布駅前にあるファンゾーンを訪れたのは約1万1,500人。翌21日に足を運んでみると、同スタジアムで開催されたアルゼンチン対フランス戦の開始前に立ち寄る両国のファンであふれ返っていました。
東京・調布駅前のファンゾーンではアルゼンチンファンの姿が目立った
インタビューに応じてくれたフランス・パリに住む男性(42)は、仕事の合間をぬっての観戦といいます。「注目プレーヤーは20歳のロマン・ヌタマック。試合は23対15でフランスが勝つよ」(実際には23対21でフランスの勝利)。
むろん、ファンゾーンでもビールが売られています。調布の会場では、大会のワールドワイドパートナー(スポンサー)であるオランダのビール、ハイネケンの売り場に長い列ができていました。
今回のW杯はラグビーの新たな楽しみ方を教えてくれているような気がします。決勝戦は11月2日。ファンにとって「至極の44日間」はまだ序盤です。