はじめに
「愛はお金では買えない」「愛より大事なものはない」と、人は思いがちです。思いたいのかもしれません。なぜなら、親友がお金持ちの男と結婚すると知ったら、きっと誰もがモヤモヤするはずなのですから。
30歳を目前にして焦っていると……
ユウカさん(31歳)は、30歳を目前にしたころから結婚したくて焦っていました。
「周りを見ると、親友のマリエも結婚願望がピークだと言っていました。もちろんすでに結婚している人たちもいます。あとは結婚なんてどうでもいい派と、いつかできればいい派に分かれていましたね。マリエと私がいちばん焦燥感にかられていました」
ユウカさんとマリエさんは派遣で働いていました。分析すると、正社員だったり資格を持って働いている友人たちは焦っていないように見えたそうです。
「そんなとき、マリエが急に結婚することになった、と。それまで何も聞かされていなかったんだけど、彼女、半年くらいつきあっている人がいたんだそうです。何も言ってくれなかったことにもショックを受けたし、結婚することになったというのがグループラインで流れてきたのも衝撃でした。私に真っ先に知らせてくれなかったんだ、と。あとからマリエは『ごめんね、なんだか言いづらくて』と。哀れに思ったのかもしれません」
彼女は皮肉交じりにそう言います。そしてマリエさんが相手について語ったことに、さらに打ちのめされました。
「その彼、なんと都内にビルを数件もつ会社の御曹司だったんです。知り合いのパーティで会ったと言ってましたけど、本当のところはわかりません。そういうことを聞くと、彼に何か瑕疵があるのではないかと想像してしまって。そんな自分がイヤな女だなと思いました」
いいことずくめではないはずだ、モテなかったアラサー女にそんな福があるわけないと彼女は心の中で思ったそう。正直な声ではあります。
御曹司といってもろくな仕事をしていないのでは、と疑ったユウカさんですが、彼は名門私大を卒業して、現在は別の会社で武者修行的に働いているそうです。性格も温和でマリエさんを大事にしてくれると聞いて、友人たちは彼に会わせろと言い出しました。