はじめに
高齢化にも対応する装備
世の中が高齢化社会に向かう中、移動の歓びを奪ってしまったり、一方でクルマに乗ること自体がある種のストレスになってしまっては本末転倒です。
すべての高齢者がそうではありませんが、判断&認知能力の低下だけではなく、根本的な筋力の低下も問題となっています。
現在多くの自動車メーカーが運転中の事故を軽減するために「先進安全装備」を採用しています。しかし、クルマに乗る前と後に関しては意外と配慮が欠けている部分もあります。
正しいドライビングポジションを取ることは安全運転につながる基本中の基本ですが、乗車時のシート位置を合わせるのは意外と体力を使うものです。「こんなものだろう」と大体の感覚と記憶でシート位置を決めてしまうことは危険にも繋がります。
そこでヤリスには簡単な操作でシートを前回と同じ位置に戻せる「イージーリターンシート」をトヨタとして初採用しています。
また腰痛持ちや筋力の低下を感じている人にとっては乗降時こそ負担が大きくなります。具体的にはシートに腰掛けた後、足を車内に入れる際の筋力、降車時にはその逆といったように身体への負担は思った以上に大きいのです。またスカートや和服などの足元を気にする場合も同様でいかにスムーズに乗り降りできるかが重要です。
その問題に対してもヤリスでは「ターンチルトシート」という新装備をトヨタ初としてオプション設定しています。簡単に説明すると前席のシートがワンアクションで外側に回転しながら傾く(シートの座面先端が前に下がる)ことで乗り降りが極めて楽になるという機構です。
回転シート自体は過去にもあったのですが、このシートの凄い点は通常のシートと使い勝手(シートスライド量や座面の高さも同じ)を確保した上で単一の回転軸ではなく、4つのリンクを使うことでシート自体を外側にせり出すことを可能にしたことです。
またシートを回転させた際にドア部分に足が干渉しないように“えぐり”を入れたり、シート後ろ側のピラーにも干渉しない設計にもなっている点も非常に良く考えられています。
トヨタによれば足腰の不自由な高齢者は約500万人いるそうですが、そのうち福祉車両を使っている人は1%と極めて少ないそうです。外出の機会が減ることで寝たきりや要介護になるリスクは2.2倍に高まるそうで、このシートは福祉車両という扱いにしないことで気軽に選べることも目的としているそうです。