はじめに

公立と比べると私立の対応の早さは一目瞭然

<モリの目>(森上展安)

タカの目さんが注目してくれた森上教育研究所の『新型コロナウィルスに関する休校期間中の授業について』のアンケートは小社の高校進路研究会(高校受験と国公私立高校をウォッチしています)の佐藤潤平氏が行ったものです。

ですので必ずしも私立中高一貫校ばかりではなく高校だけの私立校も含まれていますが、一都三県の私立高校の約半数から回答を得ています。その3分の2がタカの目さんに注目していただいた「ICTを活用した対応」を実施していました。

同研究会では引き続き第二弾のアンケートを実施する予定のため、その時にはより全体像が明解になるはずですが、4月新学期初動の立ち上がりで休校要請を受けた学校にとって「ICT対応」即ち「遠隔授業」を実施した学校がこれだけあったことは目を見張るものがあります。

3分の2という割合は首都圏の私立高校全体で考えると3割に過ぎませんが、公立中学の対応がほとんどなされなかったことを考えると、いわば私立学校の対応能力という点でこの数字は評価されて然るべきでしょう。

先生たちにとってオンライン授業化は「いきなり本番」という感覚

ある「遠隔授業」実践校の運営者によれば「先生方はいきなり本番!という感覚を持ったようです」とのこと。確かに朝礼から始まって終業まですべての授業がテレワークならぬテレスタディで新学期が始まったわけです。やがては電子黒板とパソコンを使って家庭学習する授業をオンラインで進めようと考えていたでしょうが、「明日から」100%ICT対応で運用するとは予想外の事態だったわけです。

特に大変だったのは新しく私立中学に入った中学一年生でした。先生との信頼関係や生徒同士の親交などがまったくゼロの段階からテレスタディであり、提出物や小テストの出来具合など文字通り「未知との遭遇」に戸惑ったことは想像に難くありません。

これは大学生などでも同じだったようで、新入生同士は初対面(テレビ画面上でしか会えないので)ですし、それは先生にとっても同じですので、小学生から進学したばかりの新中1生にとってはそうでなくとも緊張する新学期ですから、戸惑いの連続だったでしょう。

生徒にとっての一番の問題は課題の処理で、各教科の先生方から郵送されてくる課題が先生方もテレワークになっていることもあり、必ずしも学年全体で調査されず、どちらかというと多めの課題が出されがちであったという様子が窺えました。勿論学校によっては少ない課題で事実上放任状態の学校もあったので、上記はむしろ熱心に取り組んだ学校に起こりがちとなったケースです。

非常事態宣言の解除後もオンライン授業は必須

さて、いわばこの非常事態下での学校運営が今後は解消されるのかどうかといえば、現時点では悲観的です。感染が沈静化に向かうにせよ、感染対策はこれからも継続的に行わざるを得ないということが多くの関係者の共通認識と考えられているからです。

したがって非常事態宣言が続く間はもちろんですが、これが地域別に解除され、解除された対象域の学校となったにせよ、感染対策は必要とされるということになりそうです。

具体的には登校日を少なくする、出席して受講する場合は机と机を2メートルほど離す、密閉した空間にしないために30分毎に換気するなどといったことが日常化する可能性があります。いわばオフラインでの授業が一方にこうした形であって、一方で在宅スタディをオンラインで行うということが一定期間常態化しそうです。

クラブ活動も同様ですが、スポーツの場合「密接」は避けられない種目が大半ですから殊に対応が難しく、十全な形でやることは予防、検査、抗体などが今のインフルエンザの対応レベルまで引き上げられないと難しいかもしれません。

その意味では明らかにコロナ以前と以後ではオンライン授業―少し広く捉えればICT対応授業―へのスタンスがコロナ以前なら部分的もしくは選択的であったでしょうが、コロナ以後では全体的もしくは必須となったといえるのではないでしょうか。

と同時にこのことは学校だけでなく大人の例にも同じことで、テレワークを組み込んだ働き方をせざるを得なくなるでしょうから、一人一人のICT能力を高めていくことについて社会全体が自覚的になることでしょう。

遠隔授業によって学校の授業が家庭にとって「見える化」する効果は大きいと思います。いわば毎日が授業参観です。そのためには動画を共に見る習慣を育む。それには「中1の始めから」がよいチャンスです。なかなか中2、中3からそうしていくのは難しい。やがて親に見せなくなればそれはそれでよいのですが、中1、中2でオンライン参観するのは三者にとってよいことです。

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