はじめに
2001年10月24日、東京モーターショーの初日、日産プレスカンファレンスで突然、デザインスタディモデルが発表され、進化してきた車両型式R35「GT-R(以下GT-R)」。それから約20年経ち、世界中でいまだにファンの心を熱くしているGT-Rは、ついに2022年の生産終了(予定)に向けたカウントダウンが始まりました。
GT-Rを捉えられるのはGT-Rだけ?
日産にとって技術的支柱とも言えるGT-R。その果たす役割はいまだに多いと思います。デザインコンセプトの発表から始まり、紆余曲折を経て、ようやく2007年の第40回東京モーターショーで量産型が正式発表されたGT-R。浜松郊外にある小さなサーキットでその初代モデルを試し、感動した話などは、最新の2020年モデル試乗レポートの冒頭で触れたとおりです。そしてGT-Rに関するニュースはその後も届いていて、相変わらず注目度の高さを示しています。
最初の話題は“GT-Rを撮影するGT-R”です。当然のことですがGT-Rは世界で発売されるスーパースポーツですから、各国の自動車メディアに対しても試乗会を開催します。そして持てるパフォーマンスを存分に引き出すためにサーキットがその舞台として選ばれることも多いのです。
さらにコマーシャルなどの撮影もサーキットなどのクローズドコースで、万全の安全体制のもとに行われることが多いと言えます。今回の撮影の話題ですが、舞台となったのは、ドイツのサーキット「ユーロスピードウェイ・ラウジッツ」です。ここでGT-Rの最強モデル、GT-Rニスモ2020年モデル(以下、GT-Rニスモ)のキモとなる走行シーンを撮影したカメラカーが、これまたGT-Rだったというお話です。
通常、このテの撮影をこなすためのカメラカーと言えば、ビッグパワーの高性能SUVとかピックアップトラックなどをベースに改造されたものがほとんどです。しかし、GT-Rニスモと併走しながら撮影すること、それもサーキットという極限の舞台で、抜きつ抜かれつを繰り返しながら撮影を行うのですから、カメラカーにもそれなりの走りが求められます。正直、従来のピックアップトラックなどでは、スーパースポーツの加速やコーナリングにはとてもついて行けないのです。
リアにもステーやアームが装備され引っ張りも追いかけも対応できます
そこで用意されたベース車両がGT-Rというワケです。車両の前後にはGoProの360度カメラをはじめとした色々な撮影装置を取り付けるための特殊なステー、車内から自在にコントロール可能なアームを取り付けてあります。さらにボディですがマットブラックに仕上げてあります。これは光を吸収することでカメラカーの反射光が撮影車両を照らしたり、映り込んだりすることを防止するためです。
GT-Rに限らず、ほとんどのカメラカーはマットブラック仕上げなのですが、これがさらに迫力満点の外観に仕上がる一因になったわけです。こうして完成した“史上最速のカメラカー”、ひょっとするとカスタム費用を加えると撮影車両であるGT-Rニスモの価格、2,430万円を超える車両価格になっているかもしれないのですが、その詳細は不明です。
さらにこのカメラカーを運転するのは誰でもいいと言うわけにはいきません。運転スキルの高い腕利きのドライバーは必須条件で、今回は車両撮影やコーディネーターとしてその世界では名を知られた、マウロ・カロ氏。実は彼がGT-Rニスモの撮影依頼を受けたとき、悩んだ末にたどり着いた高性能カメラカーのベースがGT-Rだったそうです。
カロ氏がドライバーをタントし、カメラマンが助手席でカメラを操作。車内も特別仕立て
その理由としてカロ氏は「高性能なカメラカーの開発を考え始めてすぐ、『Nissan GT-R』だけが基準を満たすクルマだと気がつきました。スーパースポーツカーとしての高い動力性能と四輪駆動、優れたハンドリングと走行安定性を備えており、カメラシステムを操作するクルーを全員乗せるためのシートも備えています。候補となるモデルは他にはありませんでした」と語りました。
この言葉を証明するように助手席にはカメラマンやディレクター、リアにもカメラ助手や映像技術者など、4人が乗り込みながら撮影が行われました。結果的にGT-Rカメラカーはこうした撮影では大正解であり、今後も他のスーパーカーの迫力ある撮影などで、活躍するのは間違いないでしょう。ちなみに撮影の模様は現在もYouTubeなどで確認できます。