はじめに

アルバイトを探して

ハツネさんは、こうなったら自分が稼ぐしかないと考えます。彼女自身はパートで何ら制約がないからです。

「以前、コンビニでバイトをしていたことがあったので、早速、近所のコンビニでバイトを始めました。そして緊急事態宣言が解除されてからは近くのスナックで。当時は20時まででしたけど、うちの近くのスナック、看板を下ろしてからも営業していたんですよ。ママと知り合いだったので週に3日ほど働かせてもらいました」

その間、夫には子どものめんどうをみるよう頼んでおいたのに、帰宅すると子どもたちがお腹をすかせてうろうろしていることもあったといいます。夫は彼女が下準備をしていった料理を子どもたちに食べさせず、インスタントものやパンなどを与えては、自分だけお酒を飲んで寝てしまっていたのです。

「誰の借金のために働いているのかわかってない。恩を着せるつもりはありません。家族だから助け合っていかなければいけない。でも夫にもきちんと協力してもらわなくては。借金返済のためにがんばるのも私、子どものめんどうをみるのも私じゃ、とてもじゃないけどやっていられない。それなら子どもたちを連れて実家に帰ったほうがマシです」

夫は自責の念にかられているのでしょう。でも、そんなことで落ち込む時間があったら子どもたちのめんどうをみてほしいというのが、現実を直視する女性の気持ちなのです。そのあたり、男女はいつもすれ違ってしまいがち。

通常に戻っても…

「6月に入って、夫は通常勤務に戻りましたが、出張や残業はまだまだ。私もパートが再開したのですが、このままではやはり生活しながら借金を返すのはむずかしい。夫が定時で帰ってくるなら、もう少し時給のいいスナックなどで働こうとも思っていますが、夫は賛成しないんですよね。だからといって彼に稼ぐ手立てがあるわけでもない」

この状態が続けば、近い将来、離婚が待っているだけだとハツネさんは言います。夫がそれほど深刻に考えているのかどうかも今はわからないそうです。

「一家のことなのに、もっといえば夫の責任が大きいのに、どうして私だけがこうカリカリしなくちゃいけないんだろう。そんな思いもあって少し疲れてきました。私がいちばん損をしない方法を考えたいけど、通常の生活に戻ってみれば悪い父親ではない。プレッシャーやストレスに弱い、生活力がないのは確かですが、そこは私が補えばいいのかなとも思うし」

ふうっと彼女はため息をついて、ぽろっとこう言いました。

「生きていくって大変ですよね」

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