はじめに

アメリカの大学にあって日本の大学にはないもの

日本の大学はこれから総合選抜に大きく舵を切っていくことになっていますが、米大にあって日本の大学にないのが専攻を複数選択できる制度で、日本の大学は未だに講座制が大半のため専攻を複数持つためには学部をもう一度やり直さなくてはならず今後の改革が待たれます(来年できる新学部などではそうした工夫のあるところが増えそうです)。

そうした事情ですので、米大ニーズを国内ニーズに振り替えることは難しい面もあります。一方で早稲田大学の政経学部のように数学を入試に課すような変化は即ち学校教育の「up to date」の結果ですから、より出口戦略が明確化され米大ニーズを取り込みやすくなると思います。

もう一つ米大にあって日本の大学にないのが高校の取得単位を大学の単位として認める制度です。IBのハイレベルの有資格者は米大にいきなり専門課題に進めるので時間と費用が大幅にカットされます。

日本でも付属高校大学間で単位取得自体は認められていますが、いわば飛び級のような米大のダイナミックさはありません。ただ制度の有無より、問題は中身。高校の探究活動で成果を上げて総合選抜で合格を得られたとしても、その先が問題です。

実は大学でこれを受けて成果を深化させられる受け入れ態勢が十分とは言えないのです。特に難関国立大学はこの点がかなり学生の不満が大きいように聞いています。

探求的な学びがこれからの時代の主流に

恐らくこれを現実的にクリアするにはコロナで心理的物理的ハードルが低くなったオンラインによる学習つまりeラーニングだと思います。米大も日本の大学もeラーニングに取り組んできていますから意欲さえあれば専攻に適した学びにアクセスできるはずです。やはり複数専攻を実現できるメリットが知られるとこの辺りの事情は変わってくると思います。

それは更に言えば高校での学びが大学入試に偏重することなく、大学や社会に通ずる学びとなることと相互的な関係にあります。

これから日本の中高での学びも探究的になる方向ですが、それを意欲づける受け入れ先の大学があってこそ。

国の大学入試の改革は不透明になりましたが、米大ニーズにあるup to dateの学習内容と習得主義(習熟学習)志向は、ますます強まることでしょう。大学を含めて学校がこれに応えられるか、コロナ禍はその切迫感を一挙に見える化した観があります。

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