はじめに
唯一無二のデザイン性
FRのスポーツカーのデザインは、どちらかというとエレガントにクルマを見せます。ミッドシップの低く構えたフロントは短めで、エンジンが収まるボディ後半がグラマラスでボリューム感たっぷりに盛り上がるデザインは、かなり硬派なイメージが強くなります。
真横から見るとロングノーズ・ショートデッキというフォルムがよく分かります
FRもミッドシップも、スポーツカーとしての必然から生まれたデザインですが、それをフェラーリが仕上げると、なんとも言えない存在感があります。ランボルギーニも相当なアピール力を持っていますが、フェラーリはまた別ものの、唯一無二のデザイン性を見せてくれます。これでも前輪と後輪には車両の重さがほぼ半分ずつかかるという、走りには理想的な重量配分となっています。
好き嫌いは別として、なんとも押し出し感の強いデザインは当然のことながらエアロダイナミクスを徹底的に追求しているのですが、それ以上にボディサイドのドアの部分を彫刻刀で削り取ったようにえぐられているところが、刺激的です。もちろんこれもデザインのためのデザインではありません。空気の流れやブレーキの冷却など機能的にも十分に考慮された手法ですが、これが見る者に強烈なインパクトを与えています。パフォーマンスの高さを表現しながら、エレガントさやスポーティな雰囲気を両立しているデザインですから、丸型4灯のテールライトと同じように、いつまでも印象に残るのです。
ボディサイドを彫刻刀などでえぐり取ったようなデザインです
そんなスタイルチェックをさっと行ったあと、ボディに埋め込まれたような小さなドアノブを引いて、ドアを開けます。目の前にはブラックレザーをふんだんに使った、一見硬派なインテリアが現れます。シートやメーター回り、そしてドアの内側にはボディカラーに合わせた赤いステッチが施されています。
アクセントにはステッチで十分ですが、それでも細部までの作り込みがしっかりと行われていますから、極上とも言える上質感が伝わってくるのです。ワイルドすぎず、かと言って軟弱でもない、絶妙な仕立てがなんとも心地いいのです。もちろんこの他にタンカラーのレザーを使った仕様やアルカンタラなどもありますが、個人的にはこの組み合わせの方がシックでスポーティな印象があり、好みです。