はじめに

リッツ・パリとオテル・ド・クリヨンの試み

ではこれらパラスホテルは現在も休業中なのかというと、そうではありません。8月24日、パリ市内にあるリッツ・パリとオテル・ド・クリヨンが営業を再開しています。

両者とも、夏季休暇の間も話題性作りに努力した数少ないパラスホテルで、リッツ・パリは6月からヴァンドーム広場にケーキスタンドを出し、オテル・ド・クリヨンは7月からコンコルド広場にアイスクリームのワゴンを設置。

「パリの歴史的名所コンコルド広場に、あのオテル・ド・クリヨンが、シェフ・パティシエの自家製アイスクリームワゴンを出す」というニュースはたちまち話題を呼び、5ユーロ(約600 円)からという手ごろな値段も手伝って、テレビやSNSを賑わせることになりました。

コンコルド広場に登場したル・クリヨンのアイスクリームワゴン

また、オテル・ド・クリヨンは8月24日の再営業に合わせて、最上階スイートのテラスをルーフトップバー(屋上バー)「ボンソワール・パリ」に改装。10月4日までの期間限定で営業をしています。ルーフトップバーはここ3年ほどパリジャン・パリジェンヌに人気があり、新型コロナウイルス以降は密を避ける傾向からより一層ニーズが高まっています。

料金を下げず国内客にアプローチ

オテル・ド・クリヨンのバーディレクター、ヤン・ダニエル氏は、「ローカルなお客様を呼び込む目的で、ルーフトップバー『ボンソワール・パリ』を発案した」と説明します。

ル・クリヨンのメインエントランスで、ルーフトップバーに入るため行列する人々

「パラスホテルの利用者は外国人がほとんどだからこそ、今は地元フランスのお客様にアプローチする必要がある。アイスクリームワゴンが話題を呼んだ流れを受けて、『ボンソワール・パリ』は営業開始から行列の賑わいを見せている。お客様はテレビやSNSで情報を得ているようだ」と反響を述べます。

休業が長引き、世の中から忘れられてしまっては、格安プランを提供せずにプレステージを守った意味がありません。「1泊3,000ユーロ(約36万円)からのスイートに宿泊することはなかなかできないが、カクテル1杯なら特別な機会に利用したいと思う人は多いだろう。その経験がまた次回オテル・ド・クリヨンへ足を運ぶきっかけになれば」とダニエル氏は続けました。

[PR]NISAやiDeCoの次は何やる?お金の専門家が教える、今実践すべきマネー対策をご紹介