はじめに
数年前から、にわかに耳にするようになった「ラン活」。
前回の記事(「加熱する“ラン活” 最新事情を大本命「土屋鞄」に聞いた」)では、ラン活の盛り上がりや今年の販売状況を、老舗工房系メーカーの「土屋鞄製造所」広報・前田さんにおうかがいしました。
そして今回は、肝心なランドセル選びについて。再来年、小学校入学を控える長男を持つ筆者、そして全国のご両親にとって気になるのは選び方のポイントです。
素材やデザイン、機能性など、各社多様なアピール合戦を行っていますが、なにを重視すれば“6年間使える”大満足のランドセルを見つけられるのでしょうか。
知っておくべき素材の違い
――ランドセルを選ぶにあたって、気になることがたくさんあります。たとえば素材がたくさんあると思うのですが、それぞれどう違うのでしょうか?
土屋鞄製造所・前田由夏さん(以下同): 実際に手にとって見ていただくと、その違いがよくわかると思います。
まずは牛革(天然皮革)。土屋鞄の牛革ランドセルは「シボ加工」を施しているので、表面に細かな凸凹模様があります。そのため小さな傷などが目立ちにくく、丈夫です。天然皮革ならではのニュアンスには品があり、使い込むと体に馴染んでくるのも特徴です。
土屋鞄製造所では牛革だけでも豊富なバリエーションを揃える
また軽さが魅力なのが、人工皮革(クラリーノ(R) エフ)です。土屋鞄のランドセルの場合、牛革よりも約200g軽く、使いはじめから体に馴染むやわらかい素材です。通学時間が長いお子様などに支持されています。
そして、革のダイアモンドと呼ばれるコードバン。馬のお尻の革を鞣したもので希少性が高く、滑らかさが違います。
土屋鞄では、これら以外にもヌメ革やダブルバッドレザーなどを使ったものを用意しています。それぞれ味わいが違います。
細部にもさまざまなこだわりが
――機能性やデザインについて、ここは見ておくべきといったポイントはありますか? たとえば、男の子を持つ親御さんは特に、丈夫さや機能性が気になると思います。
丈夫さを重視したい方に見ていただきたいのは、側面のマチに施してある刺繍や工夫です。土屋鞄では、イチョウ型のステッチを採用していますが、これはランドセルの箱を6年間キレイに保つ強さのひみつです。
このなかにはプラスチックと樹脂の二重構造の芯材が入っていて、力のかかる部分をしっかりと支え、つぶれを防いでいるのです。
また、男のお子さんは、給食袋や運動袋など、とにかくなんでもランドセルの横にひっかける傾向があるので、ナスカンやDカンなどを通している側面のベルトにも、強度を保つための芯材を入れています。
わたしたちは6年間の修理サポートをしています。そのため、使い方や経年でどこがどう壊れるのか、へたってくるのか、手にとって確認することができます。その蓄積が、新しいランドセル作りにも生かされています。
――デザイン面でいうと、土屋鞄のランドセルは余計なものがなくシンプルで美しい印象です。
ランドセルについても「子供が使うはじめての革製品」という認識で作っています。そのため、6年間を通して飽きのこない、シンプルで長く愛されるデザインを大切にしています。
そのなかにも実は細かなこだわりがたくさんあります。たとえば、フォルムやステッチには、曲線を多用しているんです。ランドセルの顔となる背面にもすこしだけ曲線が。
曲線がランドセルに優しい印象を与え、お子様が使う鞄としてぴったりの雰囲気に。これも職人が一つひとつ、丁寧にミシンをかけたものです。
また、気になる背負い心地という面では、ふんわりとした背当てで、体への負担を減らしています。
親子で意見が割れた時、どうする?
――以前に比べて、カラフルなランドセルを見かけることも多くなりました。カラーで、近年の傾向はあるのでしょうか?
男の子が黒、女の子が赤というのは昔からの定番です。ただ、ひと言で「黒」といっても素材や組み合わせによってさまざまな選択肢があります。また、ディープブルー(紺)も近年、人気です。
女の子はそれぞれの好みによって幅広くお選びいただいていますが、茶色やラベンダー、水色も人気ですね。本体に落ち着いた色みの茶色を用いて、背中部分やステッチにピンクを組み合わせるなど色あわせが魅力のコンビシリーズも人気を集めています。
――各社さん、たくさん種類があるので、子供自身に「好きなものを選んで」といっても実際は難しそうです。
土屋鞄では、6年間飽きずに使えるシンプルで美しいデザインを採用していますが、ほかのメーカーさんを含めるとさまざまなランドセルが出ていますね。
6年間使うことを見据えて、まずは親御さんにどこで買うかを定めていただき、そのなかで、お子様が気に入るランドセルを選んでいただくとよいと思います。
――親子で意見が割れたときや悩まれている場合は、どのようなアドバイスをされていますか?
色やデザインで悩まれて決めかねている場合は、一度、通われる小学校のお兄さん、お姉さんたちが通学している様子を見てみるとよいかもしれません。
ランドセルには地域性もありますので、実際に通学しているお子様たちの姿を見ると想像しやすくなります。
――ラン活というと、「流行に敏感なお母さんたちによる、おしゃれな限定ランドセル争奪戦」のようなイメージを持っていましたが、土屋鞄さんのお話を聞くと「親子でじっくりランドセルを選ぶ、子供の成長に大事な活動」のように感じました。
ランドセルは、お子さんが人生で初めて使う、大きな革の鞄。心身ともに変わっていく時期に寄り添える、大切な相棒です。ランドセルを選んだ思い出が、お子さんと、そのご家族の大切な思い出になるといいなと願っています。
取材協力:土屋鞄製造所
1965年創業の老舗ランドセルメーカー。近年加熱する「ラン活」において、工房系メーカーを検討するなら土屋鞄は外せないというほど、信頼が厚い定番ブランド。全国12店舗の直営店とWebにて2018年度ランドセルを注文受付中。