はじめに
読者の皆さんから頂いた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナー(FP)が答えるFPの相談シリーズ。今回は、プロのFPとして活躍する深野康彦(ふかの・やすひこ)氏が読者の悩みにお答えします。
会社の給与振込みの都合などで数箇所に口座を持っていますが、一つにした方がよいのでしょうか?
(男性・40代前半独身)
ペイオフの観点では分ける必要なし
深野: ご質問から察すると複数の銀行に口座を開設しているようで、一つにまとめた方がいいのか、迷われているようですね。結論から言えば、一つの銀行に集中させるのは控え、2つから3つの銀行口座を保有するのが実際的かと思われます。その理由を述べることにしましょう。
近年、銀行が破綻することがないことから取り上げられることが少ないペイオフ制度。いわゆる預金保険制度による私たちの預金保護のことですが、万一、銀行が破綻した場合には、一人1金融機関当たり元本1000万円とその利息額までが保護の対象になります。
預金額が1000万円以内であれば、ペイオフを気にされる必要はまったくありませんが、仮に1000万円を超える預金があったとしても、1000万円を超える部分を「決済用預金」に入れておけば全額保護されることになります。
たとえば、2000万円預金がある場合、1000万円を定期預金、1000万円を決済用預金に預けておけば、2000万円が保護されることになります。ただし、決済用預金には利息はまったくつきません。現在のような低金利局面であれば、利息が付かなくても大きな損失にはなりませんが、将来金利が上昇した場合には、決済用預金に多額のお金を預けておくと損失を被ることになります。
ペイオフという観点では、低金利局面が続く間は1000万円を超える預金を持っていたとしても、超過分を決済用預金に預ければいいため、複数の銀行に預金を分散させる必要はありません。将来、金利が高くなったら複数の銀行に分けることを考える必要が出てくるでしょう。
複数持ちで“サービスのいいとこ取り”を
では、複数の銀行に口座を持つメリット、デメリットを考えてみましょう。
デメリットといえば、口座の管理、言い換えれば資産の管理や家計管理が面倒ということに尽きると思われます。銀行から届くDMなどによる間接的な勧誘も煩わしいと思われることがあるかもしれません。
一方、メリットは用途に応じて使い分けができる、銀行ごとのサービスを使い分けることができるなどが挙げられます。
たとえば、ATMの利用、さまざまな口座引き落しなどを考えれば大手銀行、ゆうちょ銀行が便利ですが、これらの銀行は資産運用という面ではあまりメリットはありません。
反面、ネット銀行は資産運用という側面では大手銀行を凌駕している部分がかなりあると思われます。つまり、一つの銀行ですべての取引に対して万能な銀行がないことから、私たちは各銀行が持つサービスなどのいいとこ取りをすればよいのです。
また、子どもの学校関係費などの引き落しは、強制的に一つの銀行を決められているケースが多々あります。一つの銀行に集約しようと考えても、実際にはできないというケースがありえるのです。仕事の関係で転勤とかあれば、転勤先で新たな口座を開設する必要も出てくるかもしれません。
もう一つ考慮しなければならないのが、近年では「本人確認法」などの強化により、かつてよりも銀行口座の開設が厳しくなっているような気がします。もしもに備えるためにも、バックアップ口座を持っておく必要があると思われてなりません。
就かれている仕事にもよりますが、転勤等がある職場であれば、全国ネットの大手銀行にプラスしてネット銀行などを活用する、転勤等がないのであれば、大手銀行を地方銀行などに読み替えられればよいと思われます。
口座をいくつ開設しておくのがよいという正解はありませんが、自分が管理できる範囲内で複数の銀行に口座開設しておくのが実際的でしょう。
余談ですが、筆者は仕事を抜きにしても子どもの学校関係費の引き落し等で3つの銀行を使用することを余儀なくされています。