はじめに

ハンバーガーチェーン各社が出店攻勢を計画しています。背景にあるのは、どうやら最大手であるマクドナルドの復活。でも、客層の中心を占める若年層は減少傾向にあります。はたして、各社の思惑は吉と出るのでしょうか。

主要チェーン各社の定番商品の比較から、ハンバーガー市場の現状を分析。成長のカギがどこにあるのか、考えてみましょう。


主要チェーンが出店攻勢を計画

バーガーキング米国本社が10月16日、日本事業の運営会社を香港の投資ファンドに売却し、店舗網を拡大していく方針を明らかにしました。

バーガーキングの店舗は現在、国内に98しかありません。リリースでは具体的に何年間に何店舗増やすつもりでいるのかまでは言及していませんが、現状は東京都内に34店、埼玉県内に11店、神奈川県内に8店、千葉県内に5店しかありませんから、「たいていの人が普通に行動半径内で見かける数」ではないことは間違いないでしょう。

大量出店を計画しているハンバーガーチェーンはバーガーキングだけではありません。現在160店舗のフレッシュネスバーガーは2020年度までに400店に、そしてファーストキッチンもウェンディーズとのコラボ店舗を現在の20から100に増やす計画のようです。

ただ、各社の大量出店計画が実現するのか、懐疑的な見方も少なくありません。ハンバーガーの客層は若い世代が中心だから、高齢化で需要が減る、需要が減れば市場は縮小に向かう。そうなれば過当競争が進んで客に飽きられるのではないか、というわけです。

ハンバーガーは本当に高カロリー?

そもそも、なぜハンバーガーチェーンの客層は若い世代が中心なのでしょうか。客観的に分析したデータは見つからなかったのですが、いくつかの要因が考えられます。

中でも中高年が避ける大きな要因となっていそうなのが、食べることへの罪悪感です。ハンバーガーといえば高脂肪かつ高カロリー。そんなイメージから、基礎代謝が落ちる30代になると、外食の際に魚や野菜中心のメニューのほうを選ぶようになるケースは多いのではないでしょうか。

百聞は一見に如かずと、主要チェーンのホームページや実際に店舗に足を運んで、実態を調べてみました。対象としたのは、マクドナルド、モスバーガー、ロッテリア、フレッシュネスバーガー、ファーストキッチン、そしてバーガーキングの大手6ブランドです。

比較する商品も、価格帯でそろえました。バーガーキングで最も安いバーガーがワッパージュニアという小さいサイズのもので、価格は360円(税込み)でした。そこで、他のブランドではこの水準よりも安い商品があってもそれは選ばず、牛肉のパテを使っていて、かつ、この価格に近いものを選びました。

いずれも500kcal未満

まずはバーガーキングです。代名詞はドでかいワッパーですが、中高年になると、よほど空腹の時でないと完食できなさそうです。

定規で測ってみたら、バンズの直径は13センチもありました。大きいから1個あたり490円もします。しかもカロリーは1個で750キロカロリーもあります。サイドメニューをつけたら簡単に1000キロカロリーを超えてしまいます。

しかし、ワッパージュニアはバンズの直径は10.5センチ。他のチェーンのものと比べるとわずかに大きめな程度です。味は大きいサイズと全く同じですが、カロリーは394キロ。意外に低くて驚きました。

他のブランドのものは、具材の構成や分量がそれぞれ違うのでカロリーはまちまちですが、それでもほぼ500キロカロリー以内に収まっています。

カロリーも実は思っていたほど高くない、ゆえに罪悪感を持つ理由はないということがわかったわけですが、それなら店内にもっと中高年の姿があっても不思議ではありません。そう考えると、別の理由が考えられそうです。

それは、年を取ると敢えてハンバーガーを食べたいとは思わなくなる「食べ物の指向」の問題ではないでしょうか。これがクリアできていないと、高齢化の一途をたどる日本において、ハンバーガーショップは成長の余地は限られそうです。

ヒントは「プレミアムバーガー」

現在、国内には約5300のハンバーガーショップがあるといわれています。このうち、マクドナルドが約2900、モスが約1360なので、この2ブランドだけで全体の8割を占めています。つまり、マクドナルドの動向がそのまま業界動向になってしまうわけです。

2002年当時3900店あったマクドナルドが、その後の大量閉店で2900に減っているからこそ、市場は縮小傾向にあるとされるのです。もっとも、2015年に実施した大量閉店は、前年に発覚した中国産鶏肉問題で客数が激減したことが原因なので、あくまでマクドナルド固有の失策が原因です。

そのマクドナルドが復活しているから他のブランドも大量出店に舵を切ったというのが大勢の見方のようですが、マクドナルド浮上の牽引役となっているのは日本独自メニューです。つまり、他のチェーンも単純に今のメニュー、今のスタイルのまま大量出店を考えているわけではないと考えられます

そのヒントになるのが「プレミアムバーガー」です。大きなお皿に野菜がたっぷり添えられ、ナイフ、フォーク付きでサーブされる、1品800~1000円以上する高級バーガーを出すカフェが、おしゃれなファッションビルに出店しているのを見かける機会が増えています。

実際、プレミアムバーガーの店舗数は過去8年間に3倍近くに増えているという調査結果もあります。急成長中のプレミアムバーガーは、イスやテーブルなど食べる環境も高級路線です。そして何よりも、注文をしている顧客は若者だけではありません。

プレミアムバーガーの成長要因を正しく把握し、幅広い年齢層に訴求できるメニュー、店舗環境を整備できれば、ハンバーガーチェーンにも成長の余地はありそうです。

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