はじめに
借り換えの前に、「3つの見直し」を
金利が上昇し、返済額が増えたとなると、まず思い浮かぶのが「借り換え」です。もちろん住宅ローンの借り換えは選択肢の1つではありますが、焦って判断するのはやめておきましょう。
なぜなら、借り換えには事務手数料・保証料・登記費用など、数十万円単位のコストが必要となります。仮に金利がさがったとしても、その差額で増えたコストを回収できなければ家計にはマイナスとなるからです。
筆者は日頃ご相談をお受けする中で、「住宅ローンへの不安」は、単に住宅ローン返済の問題ではなく、将来の生活全体への不安と結びついていることが少なくないと感じています。その場合、住宅ローンの借り換えだけでは根本的な解決とはならず、まずやるべきは3つの見直しです。
1. 家計の見直し
今後は金利上昇と一緒に返済額は上がることを想定しておくべきです。そこで、これから重要になるのが、「日頃の家計にどれだけの“ゆとり”があるか」という視点です。
- 手取りはいくら? 固定費の比率は何パーセント?
- 返済額の増加に備えて、見直せそうな支出はある?
- 貯蓄は増えているか?
- 今の収入を維持できる期間はどれくらい?
- 収入アップは見込めそう?
今後の返済額の増加を見据えて「フローの今とこれから」を確認しましょう。
2. つみたて計画の見直し
家計は、毎月のフロー(収入と支出)と、長期的なストック(資産や負債)のバランスで成り立っています。
たとえば、教育費や老後資金、住宅の修繕費など、将来まとまった支出が必要になる場面では、「いつもの収入」だけでは賄えません。そうした支出に備えるために必要なのが、「つみたて」です。
- 教育資金はいつ、いくら必要?
- 老後資金は順調に貯まっている?
- 家や住宅設備の修繕費は想定している?
必要なつみたてを整理して、今の状況を確認し、必要に応じてつみたてスケジュールを見直しましょう。
3. ライフプラン・キャリアプランの見直し
返済額の増加を想定すると、つみたてが不足するケースもあります。そのような場合はライフプランやキャリアプランの見直しが必要となります。
具体的には以下のようなアクションが必要となるかもしれません。
- 子どもの進学プランを変更する/奨学金の利用を検討する
- 定年後の雇用形態を調べる/リタイア時期を見直す
- 転職時期を見直す
- 働き方を見直す/収入アップを目指す
- 老後の生活水準を見直す
返済がライフプランの妨げにならないかどうかは、住宅取得する前に確認しておきたい事項ですが、気づいた時がタイミングです。まずはライフイベントの整理からはじめて見ましょう。
変化に振り回されず、主体的に選ぶ土台づくりを
こうした見直しは、本来であれば住宅取得の前に行っておくのが理想です。しかし、現実には購入してから気づくことも多いものです。「今」気づけたことが、何よりの第一歩です。
家計の中身とつかいみちを丁寧に可視化していくことで、「なんとなくの不安」を「具体的な数字」で捉え直すことができるようになり、次の一手を考える土台となります。
住宅ローンの返済額が上がりそうな今こそ、立ち止まって家計を整えるチャンスです。流されるのではなく、まずは自分が何に不安を感じているのか、クリアにするところからはじめてみましょう。それが、よりよい未来に向けた安心の第一歩になります。