はじめに

なぜ「老後資金5000万円」が必要といわれるのか?

「老後資金5000万円」という目標が現実味を帯びてきた背景には、主に2つの大きな要因があります。

1. 公的年金制度の先行きへの不安

日本の公的年金制度は、少子高齢化によって現役世代の負担が増え、将来受け取れる年金額が減る傾向にあると指摘されています。政府が公表した2024年の財政検証結果でも、将来の年金受給者の所得代替率(現役世代の手取り収入に対する年金の給付水準)が低下する見通しが示されています。

つまり、今後公的年金だけで現役時代と同水準の生活を維持するのが難しくなる可能性が高まっているのです。物価が上がっても年金額がそれほど増えない状況では、年金だけに頼るのではなく、自力で資産を形成していくことの重要性が増しているといえます。

2. 物価上昇(インフレ)による資産価値の目減り

もう一つの要因は、物価上昇、つまりインフレです。近年、消費者物価指数は高い水準で推移しており、物価は着実に上昇しています。消費者物価指数(生鮮食品を除く)は2023年には前年比3.1%上昇と41年ぶりの高い伸びを記録し、2024年も前年比2.5%上昇と高い水準で推移しました。

このような物価上昇は、将来必要となる生活資金を確実に増加させます。例えば、かつて話題になった「老後2000万円問題」も、インフレを考慮すると、同じ購買力を維持するには「4000万円」が必要になるともいわれています。

本記事で目標とした「5000万円」という金額は、これらの不確実性を考慮し、より安心感をもって老後を迎えるための、ゆとりを持った目標という位置づけです。公的年金だけでは不足するであろう部分を、自助努力で補うための現実的な目標として捉えてください。

資産形成で本当に大切な考え方:投資先探しより「家計の見直し」が先決

資産形成を始めようとするとき、「何に投資すれば一番儲かるか?」と運用先を探すことに意識が向きがちです。もちろん、高いリターンを目指すことは魅力的ですが、その前にやるべき大切なことがあります。それは、「家計の無駄を見直すこと」です。

家計の無駄を削減することと、儲かる投資先を見つけることは、どちらも将来の資産を増やすという点では同じですが、その「確実性」は大きく異なります。投資のリターンは不確実で、専門家でも予測は困難です。一方で、支出を削減すれば、その分だけ確実にお金が手元に残ります。

無理な節約ではなく、無駄な支出がないかを見直すことが、堅実な資産形成の第一歩です。生命保険料、通信費、住宅ローンなどの固定費は家計の見直しにおいて、特に効果が出やすい支出項目です。家計の無駄がある状態を放置して、いくら一生懸命に投資先を探して資産を増やそうとしても、それは「穴の開いたボートを一生懸命漕いでいる」ようなものです。まずは足元の穴を塞ぐことが、確実に資産を形成するための最も基本的なアプローチです。

「老後5000万円なんて準備が間に合わない…」と諦める必要は全くありません。今回ご紹介したように、計画的な資産運用、今ある貯金の活用、家計の見直しなどを実行すれば、40歳からでも老後資金5000万円という目標を現実的に目指すことが可能です。今日から一歩を踏み出し、将来の安心のために賢く準備を始めましょう。

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