はじめに

近年、宇宙ビジネスは急速にその市場を拡大しており、日本でもその動きが加速しています。日本経済新聞の報道によると、政府は2026年度から内閣府の宇宙組織の体制を拡充する方針です。具体的には、弁護士や技術者といった専門人材を登用するため、定員を倍増して約60人とし、他省庁と連携した関連予算の総額も2025年度比で4割増の約6000億円を確保する見込みです。


宇宙ビジネス市場の拡大

民間企業もこの分野に続々と参入しています。たとえば、楽天グループや米アマゾンは、2026年にも日本の衛星通信市場への参入を検討していると報じられています。現在この分野は、スペースX社の衛星インターネットサービス「スターリング」が独占的な地位を築いています。スターリンクは多数の低軌道衛星を用いることで広いエリアをカバーし、従来の衛星通信より高速かつ低遅延の通信を提供しています。こうした政府と民間の動きは、宇宙・衛星分野が今後さらに幅広い分野で重要な役割を果たすことを示しています。

宇宙関連投資の現状と注目企業

こうした宇宙ビジネスの成長を背景に、関連投資も活発化しています。2025年2月に紹介した、「東京海上・宇宙関連株式ファンド」は、純資産総額が2000億円を突破を突破し、9月17日時点で2365億円と達しました。同ファンドは宇宙関連ビジネスを以下の4つのグループに分類し、投資対象を定めています。

①ロケット・衛星開発製造、打ち上げサービス
②宇宙データの利用サービス
③宇宙ビジネスを支える関連ビジネス
④新たな宇宙ビジネス

このファンドは好調に推移しており、8月末時点の月次報告によると、設定来の騰落率(税引前分配金再投資 )は215%に達しています。8月末時点での組み入れ比率上位の一部企業を抜粋してご紹介します。

・MPマテリアルズ(MP)
カリフォルニア州のマウンテンパス鉱山でレアアースを採掘・加工から、精製、永久磁石の製造までを一貫して手がける米国企業です。レアアースは宇宙開発に必要な先端技術に使用されるため、大きな影響力を持っています。2025年7月に、米国防総省と数十億ドル規模のパートナーシップ契約を結び、新たな磁石工場を建設して生産能力を増強することを発表しました。新施設の稼働開始は2028年を予定しており、これにより米国の磁石生産能力は年間1万トンに増加する見込みです。

・ロケット・ラブ(RKLB)
小型・中型ロケットや宇宙船、宇宙船部品の設計・製造を手掛ける企業です。小型衛星打ち上げに特化した「エレクトロンロケット」による柔軟な打ち上げ運用と衛星製造から運用までを担う垂直統合型の事業モデルが強みです。2026年には、米空軍研究所との提携により、再利用可能ロケット「Neutron(ニュートロン)」を活用した貨物輸送の実証ミッションを行う予定です。これは、世界中に迅速に貨物を輸送するためのロケットベースの地点間輸送システムを構築する取り組みです。

・ハウメット・エアロスペース(HWM)
ジェットエンジンや航空機部品に用いる高度な金属部品を製造する企業です。宇宙だけでなく航空宇宙産業全体にソリューションを提供しています。2025年第2四半期は、売上高が前年同期比9.2%増の20億5300万ドル、営業利益が同30.9%増の5億2100万ドルと好調に推移しています。

なお、組み入れ比率上位には、ビッグデータ分析とAIを活用した意思決定支援システムを開発・提供する「パランティア・テクノロジーズ」、クラウド、AIと機械学習、通信、産業用エンドマーケットアプリケーションに不可欠な光・フォトニック製品を設計・開発する「ルメンタム・ホールディングス」、世界NO.1の時価総額を誇る「エヌビディア」が並びます。

今後も宇宙開発は進むか

宇宙開発は、通信技術や気象予測、GPSなど日常生活に不可欠な技術を提供しています。スマートフォンに搭載されているナビゲーション機能や物流業界の効率化、精密農業など、生活に不可欠な技術を提供しています。また、気象衛星が収集するデータは、台風や豪雨の予測精度を大幅に向上させました。宇宙ビジネスにはさまざまなリスクも存在しますが、今後も宇宙開発は発展していくと予想します。

※本記事でご紹介した個別銘柄は、あくまで参考情報であり、特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任において行ってください。

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