はじめに

おこづかいについて、子育て中の親なら一度は悩んだ経験があるでしょう。

親としては「周りと比べて少なすぎない?」「多く渡して浪費しない?」と不安になり、つい“正解の金額”を探してしまいます。でも、実際に我が子3人や多くのご家庭を見てきて強く感じるのは、おこづかいに大切なのは“いくら渡すか”ではなく“どんな力を育てたいか”という視点でした。

本コラムでは、金額の考え方とともに、おこづかいを「小さな経済社会の練習の場」として活用する方法をお伝えします。


調査データから見える子どもの“お金観”

全国の小4~中3男女600人を対象に、博報堂教育財団「こども研究所」が調査したデータによると、半数が「将来、お金持ちなりたい!」と回答し、お金は「なるべく節約する」「よく考えてから使う」と現代の子どもたちの堅実な気質がうかがえる結果でした。子どもたちは、物価高や社会の不安定さを敏感に感じとり、自分なりにお金と向き合い始めているのです。

また、小中学生の4割が「お金の勉強は必要」と考えていることにも驚きます。これも、ニュースやご家庭での会話から感じる、子どもなりの“現実感”の表れではないでしょうか。

我が家でも、長女がスーパーで「このアイス、前は100円だったのに120円になってる!」「このお菓子、値段は変わらないのに小さくなってるよ。どうして?」と指摘してきました。親が思う以上に、子どもたちは社会の変化を敏感にキャッチしているのです。

子どものおこづかいを考える上で大人が意識したいのは、最初から“上手に使うこと”にフォーカスするのではなく、安心安全の中で“失敗から学べる環境”を用意すること。おこづかいは小さな金額だからこそ、失敗しても生活に支障はありません。大事に使うことは伝えながらも、むしろ「お金を全部使って困った」「貯めたのに足りなかった」といった経験をたくさん積んでほしいのです。そのとき感じた悔しさや不安が将来大きなお金を扱うときの財産になります。

額面ではなく使う目的を意識した金額設定

では、実際におこづかいはいくら渡せばいいのでしょうか。前出のデータでは、小学生の1ヶ月の平均額は1,337円、中学生は2,777円です。他にも、様々な団体から学年別のおこづかい平均額調査が毎年発表されます。確かに参考にはなりますが、そこに“正解”はありません。100円でも1万円でも、子どもの学びになる家庭もあれば、ならない家庭もあるからです。

むしろ「どう渡すか?」「どう使わせるか?」という前提をしっかり話し合い、「渡す=ゴール」になってしまわないようにすることで、おこづかいからの学びを最大化できるのです。

我が家では、お金の使い方を実感できる金額設定として、以下4つの目的別の予算を親子で話し合い渡す金額を決めています。

・自分のためのお金
・人のためのお金
・貯めるお金
・増やすお金

予算決めの際に大事なことは、特に自分のためのお金において“必要なもの(ニーズ)”を先に考えてから“欲しいもの(ウォンツ)”を考えることです。大人の家計管理でも大切なことなので、身に付けたい習慣です。

例として、長女が小4のときの1ヶ月のおこづかい額を紹介します。

【自分のため】
・文房具…400円(ニーズ)
・友達と買うお菓子…400円(ウォンツ)
・週1回プール後のアイス代…180円×4回(ウォンツ)

【人のため】
・バースデープレゼント代…200円
・募金…50円

【貯める】
・名札などなくしてしまったとき…50円
・高い物が欲しくなったときの補充に…50円

【増やす】
お年玉を“おうち銀行”に預けることで利息を体験
・年始に5,000円預ける→毎月30円ずつ増える

【合計】1,850円

合計額だけ注目すると高く感じるでしょうか? しかし、それまで親のお財布から出していたものを子どもにあらかじめ渡し、管理する練習をし、一緒に振り返ることで、たくさんの学びがありました。お金の勉強が必要と感じている子どもたちだからこそ、おこづかいは遊びではなく、将来のための勉強だと話をしています。お金は自分のためだけではない、人へ手渡せることでの喜びもあること、そして、計画的に管理することで生活に安心を感じるものと学んでいます。

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