はじめに

私は毎朝6時30分に自転車でスターバックスへ向かうのが日課です。その日もいつも通りスターバックスへ向かっていたところ、小さな声で「助けてください」と声が聞こえた気がしました。気になって引き返してみると、都営住宅の階段におばあさんが座り込んでいました。

「大丈夫ですか?」と声をかけると、ゴミ出しの途中で、倒れて立ち上がれなくなってしまったとのこと。「救急車を呼びましょうか?」と尋ねましたが、「大丈夫です」との返答でした。

幸いケガもなく意識もはっきりしていたため、緊急性はなさそうでした。おばあさんの体を支えながら、ゆっくりと起き上がるのを手伝いました。お話を伺うと、背骨の圧迫骨折をして以来、足がむくんで力が入らず、両手でストックを使いながらゴミを出していたそうです。3階にお住まいとのことでしたので、私が代わりにゴミを出し、おばあさんを支えながらゆっくりと自宅までお送りしました。

ちょうど「買い物難民が3人に1人」という原稿を書いていたこともあり、まさにその現場を目の当たりにした出来事でした。


ゴミ出しができなくなると「セルフ・ネグレクト」に

私の親戚もゴミ出しの際に転倒し骨折、その後は施設で生活しています。このように、高齢者にとって「ゴミ出し」は予想以上に大きな負担となります。普段の歩行に問題がなくても、片手に重いゴミ袋を持って歩くとバランスを崩しやすく、転倒のリスクがあります。

特に2階以上に住んでいる場合、階段の昇り降りは大きな障害です。踊り場には手すりがないこともあり、ゴミ置き場までの道に急坂や積雪があれば、転倒リスクはさらに高まります。

ゴミ出しができなくなると、室内にゴミが溜まり、不衛生な環境になってしまいます。進行すれば「ゴミ屋敷」と呼ばれる状態になりやすく、不衛生な住環境は高齢者のセルフ・ネグレクト(自己放任)の一形態とされています。

セルフ・ネグレクトとは、高齢者が食事や入浴、掃除、洗濯、ゴミ出しなど本来行うべき日常生活行為をしなくなる、あるいはできなくなることで、心身の健康や安全を脅かす状態を指します。その結果、孤立が深まり、悪循環に陥る危険があるのです。

ゴミ出し支援とは?

環境省の令和2年度全国地方公共団体向けアンケート調査によると、全国の地方公共団体の約34.8%(417団体)が、高齢者向けのゴミ出し支援制度を導入しています。具体的な内容は自治体によって異なるため、まずは住んでいる地域に問い合わせてみてください。

例えば世田谷区の場合では、玄関先等からゴミ収集する支援があり、1週間程度ゴミが出されていない場合などには安否確認も行います。要介護認定を受けていれば、訪問介護サービスを利用してゴミ出しや掃除、買い物代行などを頼むこともできます。

その他、自治会、NPO法人など地域コミュニティによる支援活動も行われています。こうした情報は、地域の廃棄物部局や地域包括支援センターなどで相談できるので、困ったときは積極的に利用するとよいでしょう。

老後資金はいくら必要? あなたが今からできる資産形成の始め方、お金のプロに無料で相談![by MoneyForward HOME]