はじめに
金価格が史上最高値を更新! 金投資を始めるには遅いと思いがちですが、実は“守り”と“攻め”の両面を併せ持つ資産である「金」。金価格上昇の背景、4つの主要需要、そして投資のメリット・デメリットを整理。投資家にとって金をポートフォリオに加える意義を探ります。
金価格が史上最高値、“守り”から“攻め”へ
個人投資家として資産運用を考えるとき、「守り」と「攻め」の両面を意識する必要があります。株式や債券のように市場の動きと連動しやすい資産だけを持つと、相場が荒れたときに大きな損失を被りやすくなります。そのため、ポートフォリオの中に「相関の低い資産」や「逆相関を取れる可能性のある資産」を組み入れることで、リスク分散の効用を狙うわけです。
この観点から、金は長年「安全資産」や「代替資産」とされてきましたが、最近は、むしろ金の「攻めの資産」としての側面に注目が集まっています。金価格の上昇は止まらず、今週7日には金先物相場で史上初めて1トロイオンス=4000ドルの大台を超えてきました。
これまで金は長期的に価値を伸ばした局面があり、インフレ対策の手段として見なされることがあります。さらに、中央銀行という巨大な需要主体が存在するという点で、個人投資家が単独で扱う他の資産にはない特性を持っています。
金が安全資産や代替資産として位置づけられてきた理由には、物理的な価値と希少性があります。金は腐食しにくく、化学的に安定しているため、時間を越えて価値を保持し得るという性質があります。加えて、採掘量に限りがある希少金属で、供給が限定的なので、需要が増えれば価格が上昇しやすくなります。また、金の産出・精錬・輸送・保管にかかるコストも価格変動の背景にあり、これらの上昇が金価格の押し上げに関わります。
金の需要構造──4つの柱で“強気相場”を持続
金の需要は大きく分けて4つあります。
1.文化から資産へ「宝飾需要」
金の最大の用途の一つがジュエリーです。特にインド・中国などでは文化的・習慣的に需要が強く、インドは世界最大の人口と、所得水準の上昇や中間所得者層の増大が進むことで、宝飾需要の堅調が続くと見られます。「ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)」の2025年第2四半期の金需給報告によれば、「日常的な装飾品から高級品および資産保全手段へと、金の位置付けが変化しつつあることを示している」と分析されています。つまり、需要の構造が変わっても、結果的に市場全体の底堅さにつながっているのです。
2.テクノロジーを支える「工業・電子需要」
金は電気伝導性、耐食性に優れており、電子部品の接点・コネクタ・半導体製造プロセス上の触媒などにも用いられます。金全体需要の中では小さい割合ですが、この需要も今後も堅調に推移すると考えられます。
3.ETFや先物市場で拡大「投資需要」
金地金や金ETF、先物・オプションなどの金市場を介した個人や機関の投資行動も活性化しています。金ETFで有名なステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズによると、代表的な米国ETFである GLD(SPDRゴールド・シェアーズ) への資金流入額は、2025年9月末までに350億ドルに達し、史上最高を更新しました。
4.ドル離れが後押しに「中央銀行需要」
金は各国の外貨準備資産の一部として、中央銀行が保有する重要な資産です。実際、近年は「ドル離れ」や「地政学的分断」が意識される中で、各国が金準備を増やす動きが顕著です。2024年には金の需要における中央銀行の比率が20%を超えたという報告もあります。中央銀行の買いは、利益が出たから即売却という短期的な動きになりにくい、保有を前提とした安定した需要と考えられ、上昇トレンドの後押しや下支えとなるでしょう。