はじめに

高市さんが自民党の総裁に選ばれたことを受けた週明け10月6日の東京株式市場は大幅高となりました。積極財政・金融緩和のスタンスを表明している高市さんは株式市場にとって、もっとも歓迎すべき自民党総裁であるからです。6日の急伸については、さすがに一日で日経平均が2000円超も上げるのは行き過ぎのような印象がありますが、これは「サプライズ効果」の影響が大きかったのだと思われます。


総裁選のサプライズ勝利が株価を急騰させた

一般の世論調査では高市さんの人気が高かったと思いますが、市場関係者の間では、小泉さんが最有力で、次に林さんというのがメインシナリオだったのではないかと思います。今回の自民党総裁選はフルスペック方式で争われました。詳しくは述べませんが、党員による投票と国会議員による投票の両方で決まり、一回目の投票で過半数に届かない場合は上位2人の決選投票になります。決選投票では国会議員票のウエイトが増すため、議員票の取り込みに苦戦していると見られていた高市さんが勝つとの予想は、少なくともメインシナリオではなかったのではと推測されます。

よって、自民党総裁選の結果に賭けていた投資家のうち、多くは当てが外れた結果となり、買戻しを迫られることとなったのです。買戻しですから、価格がどうのこうの言っていられません。そこに、今回の結果を素直に好感した買いも入ってくるわけですから、買いの勢いが増し、一気に2000円を超える急騰劇となったというわけです。

「初の女性首相」への期待と経済政策への懸念

さて、その後も日本株相場は強気ムードが維持されて、日経平均はついに終値で4万8000円台の半ばを越えました。ここからあと、もう3%足らずの上昇で5万円の大台に届く水準です。高市さんの自民党総裁選勝利のインパクトがいかに大きかったかということです。それは前述の「サプライズ効果」だけではありません。サプライズというのは、1日で消化されるような短期のものです。それ以上に大きいインパクトは「初の女性総裁」が誕生したこと、そして「初の女性首相」誕生がほぼ確実なことでしょう。これは「日本が変わる」というイメージを海外投資家に抱かせる格好の材料です。

ただ、やはり株価にとっては経済が大事であることは言うまでもありません。では高市さんの経済政策は株式市場として本当に好感できるものでしょうか。

金融緩和と積極財政を掲げる高市さんが自民党の総裁に就任したことをきっかけに外国為替市場では円安・ドル高が進行しています。10月8日には一時1ドル=153円ちょうどと2月以来約8カ月ぶりの安値をつけました。

こうなると輸入物価抑制のために日銀が利上げを進めるとの見方も浮上しています。しかし、実は足元のインフレはほとんどが食料品の上昇によるものです。むろん、食料自給率の低い日本は、円安によって食料品価格は上昇するという要因もありますが、その経路は複雑で、円安がストレートに足元のインフレの要因とは言い切れないところがあります。そして、ここがいちばん重要な点ですが、日銀の金融政策だけで、市場の複雑な思惑で決まる為替レートをコントロールすることは可能でしょうか。

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