はじめに
2006年、東京・吉祥寺でオープンして以来、多くのファンをもつOLD/NEW BOOKSELECTSHOP「百年」。小説から音楽、美術、ダンス、芸能史に至るまでの幅広い古書をメインに、新刊本、ZINEやリトルプレスまでを扱う独特の品揃えは、いかにしてできあがったのか?
前回の「古書店の作り方」に引き続き、店主の樽本樹廣さんに教えてもらいました。
コミュニケーションする本屋を目指して
「百年」は、東京・吉祥寺駅から徒歩5分ほどの、とあるビルの2階にあります。一般に、通行人が認識しづらい2階以上は、経営に不利といわれています。しかし、同店は確実にファンを増やし、経営を軌道に乗せてきています。その秘密は、朗読会からトークイベントまで、随時開催されているイベントにありました。
樽本:「百年」のコンセプトは「コミュニケーションをする本屋」。著者だったり、好きな本を通して、他の読者とつながったりできるような場所にしたかったんです。文化的な発信をする、スペースとしての本屋ですね。だから、イベント時に動かせるよう、棚にはキャスターを付けて、動かせるようにしているんですよ。
今でこそ、そういったイベントを行う本屋はありますが、「百年」をオープンしようと思った12、3年前はなかったんですよ。イベントがあっても、握手会やサイン会ぐらいでした。
最初はそれほどお客様がいらっしゃらなくて……苦しかったですね。ただ、オープンして2年ぐらいの頃からでしょうか。イベントを何度も企画していくうちに、認知度も上がって、コミュニティみたいなものができていったように感じます。初期のイベントは、「自分達の店はこういうことを考えていますよ」ということをアピールする、自己紹介の場でもありました。
初期の集客に苦労したのは、店舗が2階にあるからというのもあります。外からわかりづらいし、気づいてもらえないんですよね。
ただ、一度「百年」を好きになってくださったお客様からは、このロケーションが、「隠れ家っぽい」「自分だけが知っているお店」のように感じていただけているようです。今は、2階でよかったと思っています。
インテリアについては、口にすると少し恥ずかしいのですが、「カフェっぽさ」を意識しました。当時、女性が入りやすい古書店はほとんどないと感じていました。セレクト色が強いお店だと、そういったお店もありましたが、うちはもうちょっと、「街の本屋」でやっていきたかったので。
オープンから1~2年は、お客様の7割ぐらいが女性でしたね。その女性のお客様が男性を連れて来てくださったこともあり、今は男女半々ぐらい。
年齢層は20代後半から40代ぐらいの方が多いですね。