はじめに
なんでも受け入れるのが本屋
古書店をオープンするためには、当然ながら、古書を仕入れる必要があります。現在は、古本の仕入れについて、ほぼ7割がお客様からの買い取りという「百年」。オープン前は、どのように在庫を揃えたのでしょうか。
樽本:最初は個人で安い本を買い付ける、いわゆる「せどり」で在庫を揃えました。そこに自分で持っていた本も加えました。今は、在庫が1万6000冊ほどですが、最初はたぶん、1万冊ないぐらいだったと思います。
どこかの古書店で修業をしていると、そのお店で「自分用に買っていいよ」と在庫を揃えさせてくれることもあるようですが、僕の場合は、とくにどこかで修業したわけではありません。そうでない場合は、自力です。
古書組合は、新規開店してすぐには入れないんです。信頼が必要なので、オープン後、1カ月ぐらいでないと加入できない。
せどりとは……
古本などを安く仕入れて転売すること。一般に、個人で行うそういった商売をさす。高く売れるものを見極める知識が必要とされる。
お店に並べるラインアップについて、オープン時の「せどり」では、もちろんセレクトしましたが……。今は、「セレクトしないことをセレクト」しています。
お客様の本を買い取るとき、「これはいりません」とは言いません。何より、本についての知識が広がっていくうちに、どんなものにでもおもしろいところが見つけられるようになったんです。
僕とお客様の好みが完全に一致するわけじゃないですしね。本屋ってオープンな場所だと思うので、あまり何かを排除するようなことはしたくないな、と。なんでも受け入れるのが本屋かなと思っています。
僕は、セレクトしているうちは、まだまだだと思っています。
本の世界は本当に膨大です。知らない本がまだまだある。50年古書店を営んでいる人でも、「何か新しいものはないかな」と古書市場へ来ています。
買い取りをしていても、お客様の方が本をよく知っているし、持っている。有名な方、無名な方を問わず、お客様からものすごい本の知識や愛を感じる瞬間がたくさんあるんですよ。そういうものに触れると、まだまだだなと思うと同時に、世界が広がっている感じがするんです。
陳列は、あえて雑に置いています。
簡単にジャンル分けをして、多少は著者名順にはしています。ただ、あまりきれいに並べすぎたり、陳列に激しい意味付けをしないようにしています。
僕は、お客様のほうが本について詳しいと思っています。だから、あまりカチッとこちらが決めちゃうと、つまらないと感じられてしまうんじゃないかなと。
僕らが無駄な知識を披露したところで、それじゃ物足りないというお客様は、絶対にいるんです。想定内だと、新しい発見があまりない。だから、適当に置いて、お客様に選んでもらうのがいいんです。発見があるのが、本屋の楽しみ、魅力かなと思うので。