はじめに

「私立高校無償化」と聞くと、教育費の負担は大きく減るように感じがちです。「都心部の私立進学校へ挑戦できるかもしれない」と新たな選択肢に心躍らせるかもしれません。

しかし、隣県からの“越境受験”となると、地元にはない特色ある学校や有名進学校を目指す場合もあり、授業料以外に想像以上の費用がかかるケースも少なくありません。

合格直後の「現金60万円ラッシュ」、3年間で積み上がる交通費や時間コストなど、支援制度の拡充だけでは埋まらない「越境の壁」が、シミュレーションを通じて見えてきました。

本記事では、息子の大阪への越境を検討した筆者が、越境私立・地元私立・公立の3ケースの総額と学習環境を比較。「払えるか」ではなく「3年間、無理なく続けられるか」という視点で、後悔しない進学選択を考えます。


国の支援拡充でも埋まらない「越境の壁」

2026年度から、国の「高等学校等就学支援金」の支給上限額が、所得制限なく、私立で年額45万7,200円まで引き上げられました。

「これで大阪の私立も安心?」と期待しますが、ここには大きな落とし穴があります。この支給上限額で授業料全額をカバーできるわけではないのです。ニュースで話題になる「大阪府の高校授業料完全無償化」や東京都の手厚い助成制度は、あくまで「その自治体に住んでいる生徒」が対象です。隣県在住の方が、お隣の大阪府の私立高校に通う場合、使えるのは住んでいる自治体の補助金がなければ、「国の支援金(45.7万円)」のみです。大阪府独自の支援は受けられません。

例えば、今回シミュレーションする大阪の私立進学校(A校・仮名)の場合、授業料は年額約62万円。国の支援金との差額である「年間約17万円」は、家計の持ち出しとなります。さらに、私立高校には「施設設備費」や「教育充実費」といった、授業料以外の納付金が数多く存在します。これらは支援金の対象外であり、特に設備に力が入っている都市部の大規模校では、隣接県の私立に比べ高額になりがちです。

私立校「3月現金ラッシュ」で入学までに60万円が飛ぶ

「授業料の差額くらいなら払える」と思った方も、合格の陰に待ち受ける「合格直後のキャッシュフロー」には注意が必要です。全額、家計が負担する入学式までの約1ヶ月間の支出は、まさに「時間と現金の総力戦」です。

筆者が検討した大阪の私立A校の2026年度要項をもとに、3月の支払いスケジュール(併願の場合)を見てみましょう。

3月中旬(公立合格発表翌日):入学金 200,000円+施設費・積立金等 307,000円
3月中旬(合格者招集日):制服・指定品代 約130,000円

なんと、入学式を迎える前に合計約64万円もの支払いが発生します。入学時の納付金は、学校によってはクレジットカードが使えるケースもありますが、銀行窓口での振込(現金)のみのケースもあるので、事前確認が必須です。公立高校が第一志望で「滑り止め」として受験する場合は、公立の合格発表翌日が手続き締切日という場合も多く、猶予はありません。合格直後の判断と行動を家族で事前に話し合い、60万円以上の現金を口座に準備しておく必要があるのです。

【シミュレーション】「公立」vs「地元私立」vs「越境私立」3年間の総支出を比較

では、実際に3年間通った場合、総額でどれくらいの差が出るのでしょうか。隣県在住の筆者が検討した「3つの進学パターン」で比較します。

■ケース1:片道90分の越境私立進学校(大阪A校)約190万円
息子の憧れの吹奏楽強豪校。設備もカリキュラムも特色があり、学費・納入金すべて県内私立より割高です。また、部活動によっては、遠征費など追加で100万円以上かかるケースも珍しくありません。学校説明会などで事前確認が必要です。

■ケース2:地元私立進学校(県内B校)約140万円
県内の有名進学校で、大阪からの越境生徒も多い学校へ進むケースです。B校のような県内の私立特進コースは、補習環境の充実さが大きな特色で、個人差はあるものの、通塾費用が抑えられた場合、コストパフォーマンスが高いともいえます。

■ケース3:地元公立高校(県立高校)約60万円
学校教育費のみで比較すると、やはり公立の圧勝です。授業料は国の支援金で全額カバーでき、入学時も最小限の必要経費のみです。しかし、もし大学受験対策の塾代が必要となると景色は一変します。公立は私立特進コース等に比べて授業の進度が緩やかな場合が多く、難関大学現役合格を目指すなら、早期から塾での補習が必要となるケースが少なくないのです。

また、学費や通学費だけでなく、通学時間も見逃せません。越境の場合、通学時間が往復で3時間かかるというのも珍しくありません。本人の体力だけでなく、親も早朝のお弁当準備や駅までの送迎という点でも「見えないコスト」になります。

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