はじめに
今週、3日連日で日経平均株価が過去最高値を更新し、日本の上場企業は6年連続の最高益を見込んでいます。トランプ関税などの逆風を跳ね返し、企業が「稼ぐ力」を本質的に高めている今、投資家が注目すべきは「黒字転換」銘柄です。赤字から脱却し、市場の評価が一変する瞬間にこそ、大きなリターンの源泉が潜んでいます。本稿では、背景の異なる4つの最新決算事例を踏まえ、黒字の「質」を見抜く実践的なSTEPを解説します。
6年連続の最高益へ、日本企業の「稼ぐ力」が一段と向上
今週、2026年2月25~27日、日経平均は3日連続で過去最高値を更新する強い値動きでした。
日本の上場企業の業績トレンドは、数字の上でも空気感の上でも「一段、地力が上がった」局面にあります。日本経済新聞の集計では、2026年3月期の上場企業(プライム中心・3月期決算約1000社)の純利益見通しは、従来の「前期比減益」想定から一転。「前期比約1%増」へと上方修正され、6年連続で最高益を更新する見込みだと報じられました。また、SMBC日興証券の試算でも、26年3月期の純利益は3.9%増の54兆2877億円に達すると予測され、日本企業の稼ぐ力は極めて強固な基盤の上にあります。
この躍進を支える背景には、AIインフラ投資やデータセンター需要、利上げ局面を追い風とする銀行の好調、堅調なインバウンド消費があります。しかし、注目すべきは企業内生の変化です。非中核事業の売却や資本効率改革が、全体の利益率を押し上げています。懸念されたトランプ関税による影響が、当初想定を下回ったことも寄与した模様です。
内閣府の「日本経済レポート(2025年度)」や、日銀の「経済・物価情勢の展望」が示す通り、省力化・デジタル化・半導体関連の中長期の投資需要が、設備投資を力強く下支えする構図が鮮明となっています。
今回、減益予想から一転して増益見通しになったという事実は、日本企業の根本的な利益率が高まり、財務余力が増していることを示唆しています。この潤沢な財務余力は、株主還元にも賃上げにも活用できる原資です。株主還元が強まれば、株価の下支えになります。賃上げが浸透すれば、内需の底上げにつながり、サービス業や国内需要依存型の企業の業績に波及します。内閣府が指摘する「物価と賃金の好循環」を企業部門が力強く支える構図が定着し、春闘での高水準の妥結や実質賃金のプラス転換が確認できれば、この最高益は単年の打ち上げ花火ではなく、もう一段強い持続性を帯びてきます。
一方で、日銀が指摘するように、米国の関税政策や海外需要の動向、サプライチェーンの再編といった不確実性は依然として残ります。だからこそ投資家は、現状の最高益を無条件の前提にするのではなく、最高益が維持される条件がどこにあるのかを、決算発表のたびに再点検する真摯な姿勢が求められます。
マクロの追い風と資本効率改善がもたらす「二極化」
足元の決算においては、日本企業がどのように稼ぎ方を更新し、株主還元や賃上げの原資を創出しているか、その構造を確認することが重要です。投資家としては、最高益を可能にしているドライバーが一時的な需要なのか、構造的な変化なのか、それが持続するのか反動が来るのかを分析し、自身が注目しているセクターや銘柄の現在地がチェックポイントになります。
同じ円安やインフレ局面でも「利益が伸びる会社」と「コスト高で苦しくなる会社」の二極化が進んでおり、決算がその差を可視化しています。為替変動や価格転嫁の影響を受けやすい層は、前提条件が変わると利益が大きく振れるため、会社側のガイダンスや想定為替レートの保守性が注目点になります。
「黒字転換」が投資家を惹きつける理由
こうした二極化の環境下において、市場の評価が一変する強力なシグナルとなるのが「黒字転換」です。黒字転換とは、企業が赤字局面を抜け出して、利益を出せる状態に戻った、あるいは新たに利益体質へ移行し始めたことを意味します。
投資の世界では、同じ増益でも、黒字転換がもたらすインパクトは格別です。理由は単純で、赤字企業はPERなどの一般的なバリュエーション指標で測りにくく、投資家の意思決定が「期待」や「ストーリー」に偏りがちだからです。
そこに黒字という数値の足場ができると、客観的な評価の土俵が整い、投資家層が広がりやすくなります。その結果、銀行や機関投資家、指数連動ファンドなど、ルールベースのマネーが入りやすくなる余地が生まれます。
加えて、赤字から黒字への変化は、事業が損益分岐点を超えたことを示します。そのため、その後の売上増が利益に直結しやすい、いわゆるオペレーティング・レバレッジが効きやすい局面に入っている可能性があります。一過性の要因での黒字化は持続しませんが、だからこそ投資家は、黒字転換を「ゴール」ではなく「入口」と捉え、その質を点検していく必要があります。