はじめに
ある日、夫が急死…。残されたのは、専業主婦の妻、住宅ローンの残債、そして未就学の子ども。
突然の出来事に直面したとき、深い悲しみと同時に押し寄せてくるのが、「これからの生活はどうなるのか」という不安です。遺族年金があるとはいえ、実際に知りたいのは、毎月いくら受け取れるのか、生活費は足りるのか、不足分はどう備えるべきか、という具体的な生活設計ではないでしょうか。
本記事では、年収600万円の会社員家庭を前提に、遺族年金の受給額をシミュレーションし、家計に生じる不足分の考え方と備え方まで具体的に解説します。
遺族年金の仕組み
遺族年金は、いわゆる「2階建て構造」です。1階部分が国民年金から支給される遺族基礎年金、2階部分が厚生年金から上乗せされる遺族厚生年金です。
遺族基礎年金の支給対象は「子のある配偶者」または「子」です。子は原則として18歳到達年度末までとされています。つまり、子どもがいない配偶者は原則受給できません。一方、遺族厚生年金は、厚生年金加入者が亡くなった際に、一定の要件を満たした遺族に支給されるもので、子どもがいない場合でも受給可能です。
したがって、妻と子どもがいる家庭で会社員の夫が亡くなった場合、要件を満たせば妻は遺族基礎年金と遺族厚生年金の両方を受給できます。
ただし、遺族年金には収入要件が設けられており、年収が850万円以上の方は原則受け取れません。また、夫が自営業者(国民年金のみ加入)の場合は厚生年金に加入していないため、受け取れるのは遺族基礎年金のみとなります。
なお現行制度では、遺族厚生年金は原則として生涯給付ですが、2028年4月から制度見直しが予定されています。見直し後は、2028年度末時点で子どもがいない40歳未満の女性について、給付が原則5年間の有期給付となる方向で検討されています。
モデルケース:夫(年収600万円・会社員)が亡くなった場合
具体的にイメージしやすいよう、以下の条件で遺族年金を試算してみましょう。
・厚生年金加入:20年(240か月)程度
・子:1人(未就学)
・妻:専業主婦
1)遺族基礎年金(令和7年4月分から)
子のある配偶者が受け取る遺族基礎年金は、以下のとおりです。
年831,700円 + 子の加算(第1子は年239,300円)
子ども1人の場合、年約107万円となります。
2)遺族厚生年金
遺族厚生年金は、亡くなった方の老齢厚生年金(報酬比例部分)の4分の3が支給されます。加入期間が300月(25年)未満の場合は、300月加入とみなして計算されます。
標準報酬(平均)×係数(5.481/1000)×加入月数
試算すると、以下のようになります。
・年収600万円→ 標準報酬月額を約50万円
・加入240か月(20年)→300月みなし適用
老齢厚生年金(報酬比例部分):50万円 × 5.481/1000 × 300月 ≒ 年約82万円
その4分の3である年約62万円が遺族厚生年金の目安です(※実際は標準報酬月額・賞与・加入期間・加入時期などで上下します)。
3)遺族年金の合計(概算)
遺族基礎年金(年約107万円)+遺族厚生年金(年約62万円)≒ 年約169万円(=月約14.1万円)
この合計額が「生活が成り立つか」を考えるスタートラインになります。専業主婦世帯の場合、収入の中心はこの遺族年金となるため、家計が回るかどうかは不足額の把握にかかっています。