はじめに
2026年4月30日、ドル円相場は一時1ドル=160円台半ばまで円安が進んだ後、円買い介入とみられる動きによって155円台まで急速に円高方向へ振れました。
円安が進むたびに、SNSでは「円だけで資産を持っているのは危ない」「外貨資産を増やした方がいい」という声が増えます。「とりあえずオルカンを増やしておけば大丈夫かな」そう考えた人もいるでしょう。
その判断が、すべて間違っているわけではありません。円だけで資産を持つリスクを意識することは、今の日本では必要な視点です。実際、オルカンは為替ヘッジを行わない全世界株式ファンドであるため、円安になれば円換算の評価額が押し上げられる面があります。
ただし、円安対策として買い増す前に確認したいことがあります。それは、「すでに自分がどれだけ外貨資産を持っているか」です。オルカンを十分に持っている人が、円安のニュースを見てさらに買い増すと、それは「追加の円安対策」ではなく、為替リスクや株式リスクをさらに増やしているだけかもしれません。
この記事では、円安局面でオルカンを買い増す前に確認したい「資産全体の通貨配分」について、FPの視点から解説します。
オルカンはすでに外貨資産の性質を持っている
オルカンは、日本を含む世界中の株式にまとめて投資できるインデックスファンドです。ただし、「全世界株式」といっても、世界中に均等に投資しているわけではありません。実際には株式市場の規模に応じた配分になっているため、米国株の比率が大きくなっています。
また、オルカンは為替ヘッジを行わないため、海外株式の値動きだけでなく、円安・円高といった為替の影響も受けます。円安になれば、海外資産の円換算額は増えやすくなります。反対に、円高になれば、海外資産の円換算額は下がりやすくなります。
ここで押さえておきたいのは、オルカンを持つこと自体は円安への備えになり得る一方で、すでに十分保有している人にとっては、追加購入が新しい対策になるとは限らない点です。「円安だからオルカンを増やす」と反射的に考えると、円安対策のつもりで、為替リスクを積み上げることになりかねません。
さらに見落としてはいけないのは、オルカンは為替商品ではなく、株式投資である点です。円安に備えるつもりで買ったとしても、世界的な株安が起これば、円換算でも大きく下がる可能性があります。つまり、オルカンを増やす判断では、「円安に備えられるか」だけでなく、「株式の値動きにどこまで耐えられるか」も同時に確認する必要があります。
本当に確認すべきは「資産全体の通貨配分」
円安対策を考えるときに大切なのは、オルカンをいくら持っているかではありません。自分の資産全体のうち、円建て資産と外貨の影響を受ける資産が、それぞれどのくらいあるかを見極めることです。
円建て資産には、預貯金、日本国債、円建ての保険、退職金として将来受け取る予定の資金などがあります。これらは基本的に円で評価されます。円安が進んでも、預金残高の数字そのものは増えません。
外貨の影響を受ける資産には、オルカン、S&P500型投信、外国株式、外貨建て債券、外貨預金などがあります。これらは、投資対象そのものの値動きに加えて、為替の影響も受けます。
たとえば、金融資産が2,000万円あり、そのうち1,600万円が預貯金、300万円が円建て保険、100万円がオルカンという人であれば、資産の大半は円建てです。この場合、長期資金の一部をオルカンなどの外貨資産に振り向けることには合理性があります。
一方で、金融資産2,000万円のうち、すでに1,000万円以上をオルカンや米国株型投信で持っている人はどうでしょうか。この場合、資産の半分以上がすでに為替の影響を受ける状態です。
そこからさらに円安への不安だけを理由にオルカンを増やすと、円安対策ではなく、外貨資産への集中が強まります。外貨資産を多く持つこと自体が悪いわけではありません。若く、収入が安定していて、長期で使わないお金を運用している人なら、外貨建て株式の比率が高くても問題ないケースはあります。
ただし、今後5年以内に住宅購入、教育費、独立資金といった大きな支出を予定している人は別です。近いうちに円で使うお金まで外貨リスクにさらすと、必要なタイミングで円高や株安が重なったときに、想定より大きく資産が減っている可能性があります。