はじめに

米国株市場では、AI関連株や半導体株を中心に強い相場が続いています。ただ、株価を動かしているのは企業業績や成長期待だけではありません。オプション市場の拡大や短期的な需給の偏りも、相場を見るうえで無視できない要素になっています。


米国株高を支える「需給」の力

足元の米国株市場では、S&P500やナスダック総合指数が最高値を更新し、AI関連株や半導体株を中心に強い相場が続いています。

企業決算の底堅さや、AI投資への期待が株価を支える一方で、もう一つ見逃せない要素があります。それが、オプション市場の急拡大です。

投資をする上で、企業業績や金利、為替、景気指標を見ることはもちろん大切です。しかし、実際の相場では「正しい材料が出たから素直に株価が上がる」「悪材料が出たから素直に下がる」とは限りません。なぜなら、相場は材料だけでなく、需給によって大きく動くからです。

ここでいう需給とは、簡単に言えば「買いたい人が多いのか、売りたい人が多いのか」という力関係です。株価は理論上の価値だけで決まるのではなく、実際にその瞬間、どれだけ買い注文・売り注文が集まっているかで動きます。どんなに良い会社でも、すでに多くの投資家が買い切っていれば上値は重くなりますし、逆に悪材料が出ても、売りたい人がすでに売り終えていれば、株価は下がりにくくなります。

つまり投資では、「何が良いか」だけでなく、その良さを市場がどこまで織り込んでいるかを見ることが重要です。

コールオプションの増加が株価上昇を押し上げる仕組み

こうした需給を見るうえで、近年、無視できなくなっているのがオプション市場です。オプションとは、将来の一定時点までに、株価指数や個別株をあらかじめ決めた価格で買う権利・売る権利のことです。少し難しく聞こえますが、投資家心理を映す市場として見ると、とても重要です。

S&P500やナスダック、半導体株に対して「さらに上がる」と考える投資家が増えると、コールオプション、つまり買う権利への需要が高まります。反対に、「下落に備えたい」と考える投資家が増えると、プットオプション、つまり売る権利への需要が高まります。

ここで大事なのは、オプション市場の動きが、単なる投資家心理の反映にとどまらず、実際の株価の動きを増幅させることがあるという点です。

その背景には、オプションを売っている証券会社やマーケットメーカーのヘッジがあります。証券会社やマーケットメーカーは、自分たちのリスクを抑えるために、株価指数先物や現物株を売買してヘッジを行います。

投資家が大量にコールオプションを買うと、その反対側にいる業者は、相場上昇で損失が膨らまないように先物や現物を買ってヘッジすることがあります。すると、投資家の「上がるだろう」という期待が、実際の買い需要につながり、株価上昇をさらに押し上げる場合があります。

これが、いわゆるオプション需給が相場を押し上げるという現象です。

強い相場ほど需給の逆回転に注意

S&P500のような主要指数では、オプション市場の規模が非常に大きいため、短期的な相場の方向性に影響を与えることがあります。企業業績が良い、AI関連株が強い、金利低下期待がある、といったファンダメンタルズの材料に加えて、コールオプションへの資金流入が重なると、相場は想定以上に上に走ることがあります。

このとき投資家が気をつけるべきなのは、上昇相場のすべてを「企業価値の向上」とだけ見ないことです。もちろん、業績の裏付けがある上昇は重要です。しかし一部には、デリバティブ市場のヘッジ買いや短期資金の集中によって、上昇が加速している部分もあります。ここを見落とすと、「強いからまだ上がる」と思って高値で飛びつき、需給が逆回転したときに大きな調整に巻き込まれるリスクがあります。

[PR]NISAやiDeCoの次は何やる?お金の専門家が教える、今実践すべきマネー対策をご紹介