はじめに
一部のアクティブファンド運用者や市場関係者から、「S&P500やオルカンといったインデックスファンドへの集中投資は危険だ」という主張が聞かれます。この4月のようにS&Pが急落する局面では、こうした声がより強まる傾向にありますが、その指摘は本当に正しいのでしょうか。
「インデックス運用は危険」という主張の背景
なぜS&P500やオルカン(MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス)への集中投資が危険だといわれるのでしょうか。その主張は、以下の2点に集約されます。
1つ目は、「世界的にインフレが常態化した。そうなると、製品やサービスに価格転嫁できない企業は厳しくなる。したがって、インフレに強い企業を選別して投資するアクティブファンドが有利であり、負け組企業も含めて構成銘柄に入れているインデックスファンドは、アクティブファンドに劣後するはずだ」という意見です。
2つ目は、「米国の株価が急落すれば、S&P500や、米国株式の組入比率が高いMSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(以下、MSCI ACWI)に連動するインデックスファンドの解約が相次ぎ、それが株価をさらに押し下げることになる」というロジックです。
まず後者に関してです。NISAの制度改正が行われた2024年1月以降、「周りがやっているから」という理由で、S&P500やMSCI ACWIに連動するインデックスファンドで積立を始めたという、投資慣れしていない人たちは少なくないでしょう。そうした人たちが株価の急落に直面して怖くなり、解約してしまうというケースは、考えられないこともありません。
株価急落時にも資金流出は起こらなかった
では、実際に数字で検証してみましょう。新NISAがスタートした2024年1月以降、大きな下落は3回ありました。2024年8月、2025年4月、2026年3月です。この3回について月間の資金流出入を調べてみました。ちなみに代表的なファンドとして、「eMAXIS Slim」の米国株式(S&P500)と全世界株式(オール・カントリー)の資金流出入を取り上げてみます。
まずS&P500から見てみましょう。新NISAがスタートする直前、2023年12月の資金流出入は777億1446万円の資金流入でしたが、2024年1月は2090億4720万円に急増しました。
では、前述の株価が急落した3回の月の資金流出入はどうだったのでしょうか。
2025年4月=1745億7435万円の資金流入
2026年4月=1359億3645万円の資金流入
次にMSCI ACWI(オルカン)です。こちらも、新NISAがスタートする直前、2023年12月の資金流出入は1088億4165万円の資金流入でしたが、2024年1月は3439億2373万円に急増しました。株価急落月の資金流出入は以下の通りです。
2025年4月=1896億8045万円の資金流入
2026年3月=2904億9749円の資金流入
これらの数字から察するに、解約額が追加設定額を上回って資金流出に陥ったケースはないことが分かります。もちろん、上記の数字は、追加設定額から解約額を差し引いたものですから、解約がまったく生じていないわけではなく、一定の解約は発生しているはずです。ただ、解約によって流出した金額以上に、追加設定によって流入してきた資金が多く、その差引で見ると、これだけの資金純流入が続いていることを表しています。
こうなると、一部で懸念されている「米国の株価が急落すれば、S&P500や、米国株式の組入比率が高いMSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(以下、MSCI ACWI)に連動するインデックスファンドの解約が相次ぎ、それが株価をさらに押し下げることになる」というロジックは、少なくとも現時点においては成り立っていないことになります。