はじめに

日本株市場ではここ数年、「AI関連銘柄」といえば半導体製造装置メーカーが中心でした。生成AIブームが本格化した2023年以降、市場の資金は半導体製造装置メーカーに集中しました。


GPU中心だったAI相場

わかりやすい例は検査装置を手掛けるアドバンテストです。AI半導体需要の急増を背景に株価は大きく上昇しました。そのAI半導体といえばGPUです。GPUとは、元々画像処理を行う半導体でしたが、大量の計算を同時に処理する能力がAIの学習や推論に最適であるため、AI開発に不可欠なものとなっています。AI向けGPUは、チップレット技術やHBM(広帯域メモリ)を組み合わせるなど複雑化しており、数千に及ぶ配線を同時に、かつ高速で検査する必要があります。

アドバンテストの主力製品は、この厳しい技術要件を満たすことができる世界有数の検査装置として、GPUの寡占メーカーであるエヌビディアから「指名買い」されるほどの高いシェアを誇っています。

というわけで、AIが伸びる=GPUが増える=GPU半導体メーカー(エヌビディア)や装置メーカー(アドバンテスト)が買われる、という構図が続いてきました。

ところが、相場の潮目が変わったようです。例えば、4月下旬にかけて米国のフィラデルフィア半導体株価指数(SOX)は未曾有の18連騰を達成しましたが、その期間におけるエヌビディアの上昇率は特段、めざましいものではなく、ようやく2025年秋につけた高値を更新する程度でした。エヌビディアが半導体株の大相場で主役の座を降りた印象を持ちました。

「半導体が動く環境」を支えるインフラ企業へ波及

足元のAI半導体相場では物色の傾向が変化し始めています。その象徴が電線株の急騰でした。かつて成熟産業とみなされていた電線メーカーは、現在ではAIインフラの重要な担い手として再評価されています。たとえばフジクラや古河電気工業は、AIサーバー内部やデータセンターで使われる高速伝送ケーブルや光関連部材への期待から、市場の主役へと浮上しました。

AIサーバーは単なる半導体の集合体ではありません。大量のGPUを高速接続する配線、安定した電力供給、冷却、そして光通信が不可欠です。GPU性能が向上すればするほど、逆にボトルネックとなるのは通信速度や発熱問題です。その結果、市場は「半導体を作る企業」から、「半導体が動く環境を支える企業」へと関心を移し始めています。

同じ変化は電子部品メーカーにも見られます。村田製作所やTDKは、コンデンサーや高周波部品、電源関連技術などを通じてAIサーバー需要の恩恵を受ける可能性があります。AIが普及するほど演算量は増え、それに伴って必要な電力も増加します。すると重要になるのは「演算」そのものよりも、「大量の電気を安定供給し、熱を制御する技術」です。

また、AI向けメモリー需要という観点では、材料や基板関連企業への波及も大きくなっています。AI計算はGPUだけでは完結せず、膨大なデータ処理のためには高性能メモリーやストレージが必要になります。その結果、素材メーカーや半導体材料企業まで恩恵が広がっています。こうした流れの中で、もっとも象徴的な存在がキオクシアホールディングスです。まさにメモリーのど真ん中の銘柄です。キオクシアの高騰ぶりは、もはやいうまでもないことでしょう。

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