はじめに

日経平均株価は2026年4月27日、終値で60,537円36銭となり、終値ベースで初めて6万円台に乗りました。株価の上昇によって、日本株関連の商品をNISA口座で持っている人の中には、含み益が大きく膨らんだ人もいるでしょう。

こうした局面になると、SNSでは「ここまで上がったなら一度利益確定してもいいのでは」「新NISAは売っても枠が復活するから、利確しても損ではない」という声が出やすくなります。

「ここまで育った資産を、一度現金化しておきたい」「下がったところで買い直せたら理想的だ」と感じるのは自然なことです。含み益が増えるほど、今度はそれを失う不安も大きくなるからです。

ただし、結論からいえば、「新NISAは枠が復活するから利確しても問題ない」という理解は不十分です。枠が復活するのは事実ですが、戻るタイミングや金額には条件があります。そこを曖昧にしたまま売却すると、「思ったほど枠が戻らない」「買い直したい時に年間枠が足りない」「結果的に高値で買い戻す」といったことが起こり得ます。

本記事では、日経平均6万円時代に高まりやすい利確衝動と、新NISAの枠復活ルールについて、FPの視点から整理します。


なぜいま、利確したくなるのか

株価が大きな節目を超えると、投資家心理には変化が生まれます。

「ここまで上がったなら、そろそろ天井ではないか」
「せっかく増えた利益を、また減らしてしまうのはもったいない」
「一度売っておけば、少なくとも利益は確定できる」

こう考えること自体は、決しておかしなことではありません。長期投資をしている人でも、相場が大きく上がれば利益確定を意識するものです。

問題は、その判断に「新NISAなら売っても枠が戻るという制度理解が加わることで、売却への心理的なハードルが下がりすぎることです。

新NISAの枠復活ルールは、売却をしやすくするための仕組みに見えるかもしれません。しかし実際には、短期的な売買を後押しする制度ではありません。ライフイベントや資産配分の見直しに合わせて、長期的に制度を使い続けるための柔軟性と考えた方が実態に近いです。

「枠が復活する」には条件がある

新NISAでは、商品を売却した場合、売却した商品の簿価、つまり取得金額の分だけ非課税保有限度額が翌年以降に復活します。金融庁も、年間投資枠と非課税保有限度額は簿価をもとに計算されると説明しています。

ここで重要なのは、復活するのが「売却時の時価」ではなく、「購入したときの金額」だという点です。

たとえば、100万円で購入した投資信託が200万円に値上がりしたとします。この状態で売却すれば、利益100万円にはNISAの非課税メリットが効きます。しかし、翌年以降に復活する非課税保有限度額は200万円ではありません。購入時の金額である100万円分です。

つまり、含み益が大きくなったからといって、その利益分まで新たな非課税枠として戻るわけではありません。

もう一つ大事なのは、復活するのは「翌年以降」だという点です。売却した年のうちに、同じ枠をすぐ使い直せるわけではありません。今年売った分は、来年以降に再利用できる仕組みです。

さらに、年間投資枠そのものが増えるわけでもありません。新NISAの年間投資枠は、つみたて投資枠120万円、成長投資枠240万円、合計で最大360万円です。売却によって生涯の非課税保有限度額が復活しても、その年に投資できる年間枠が360万円を超えるわけではありません。

この点を誤解すると、「売れば今年もっと買える」「高くなった分の枠も戻る」と考えてしまいます。しかし、制度上はそうではありません。

売って買い直す間に、相場は待ってくれない

利確を考えるとき、制度面と同じくらい重要なのが、売却後の再投資タイミングです。

一度売却して現金に戻すと、その資産は市場の値動きから外れます。その後に相場が下がれば、安く買い直せる可能性はあります。しかし、相場がさらに上がれば、売った価格より高い価格で買い戻すことになります。

「いったん売って、下がったところで買い直す」という判断は、聞こえは合理的です。ただし、実際には二つの判断を当てる必要があります。「どこで売るか」と「どこで買い戻すか」です。

売却の判断だけで終わるわけではありません。買い戻しまで含めて成功しなければ、長期で持ち続けた場合よりも不利になる可能性があります。

特に新NISAで積立投資をしている人にとっては、「市場に居続ける期間」が大切です。売却しても過去の利益が消えるわけではありませんが、現金化している間は、その後の上昇を取り込めません。これが機会損失です。

「枠が戻るから売っても大丈夫」という言葉は、この機会損失を見えにくくします。制度上の枠が戻ることと、投資成果が守られることは別の話なのです。

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