はじめに
金利上昇は、株式市場にとって悪材料と受け止められがちです。ただし、同じ金利上昇でも、背景がインフレ期待なのか、実質金利の上昇なのかによって、市場への影響は変わります。金利の中身を分けて考えると、グロース株や日本株への影響も読み取りやすくなります。
金利上昇だけでは相場を読めない
株式市場を見ていると、「金利が上がったのでハイテク株が売られた」「インフレ懸念で長期金利が上昇し、株価の重荷になった」といった解説をよく目にします。
個人投資家にとって、この説明は一見わかったようで、実は少しわかりにくい部分があるようです。
それは、「金利が上がる」と言っても、その金利の中身にはいくつかの要素があり、すべての金利上昇が同じ意味を持つわけではないからではないでしょうか。
名目金利の内訳を考える「フィッシャーの法則」
そこで参考になるのが、経済学の基本的な考え方である「フィッシャーの法則」です。
フィッシャーの法則とは、非常にシンプルに言えば、名目金利は実質金利と期待インフレ率に分けて考えることができる、というものです。式で表すと、「名目金利=実質金利+期待インフレ率」となります。
ここでいう名目金利とは、私たちが普段ニュースで目にする金利です。
例えば米10年国債利回りが4.6%、日本の10年国債利回りが2%台、住宅ローン金利が何%、定期預金金利が何%というときの金利は、基本的には名目金利です。
実質金利はお金の価値を左右する
一方で、実質金利とは、インフレの影響を差し引いた後の金利です。たとえば、預金金利が3%あったとしても、物価が4%上がっていれば、そのお金の購買力は実質的には1%目減りしていることになります。
逆に、預金金利が3%で、物価上昇率が1%であれば、実質的には2%のリターンを得ていると考えることができます。つまり、投資家にとって本当に重要なのは、表面的な金利の高さだけではなく、「インフレを差し引いた後に、どれだけお金の価値が増えるのか」という点です。
この考え方を使うと、現在の株式市場の動きもかなり見えやすくなります。
例えば、名目金利が5%で、期待インフレ率が3%なら、実質金利はおおよそ2%です。これは、投資家がインフレを差し引いても2%程度の実質リターンを求めているということを意味します。逆に、名目金利が2%で、期待インフレ率が4%なら、実質金利はマイナス2%です。この場合、表面上は金利がついていても、実質的にはお金の価値が減っていることになります。
これが、インフレ局面で現金や低利回りの預金だけを持つことのリスクです。