はじめに

実質金利の上昇は高PER株の逆風

株式市場との関係で特に重要なのは、期待インフレ率が上がると、名目金利も上がりやすくなるという点です。

投資家は、将来の物価が上がると考えると、同じ国債を買う場合でも、より高い利回りを要求します。なぜなら、将来受け取る利息や元本の価値が、インフレによって目減りしてしまうからです。

期待インフレ率が上がれば、債券市場では国債価格が下がり、利回りが上がるという動きが起こりやすくなります。

この金利上昇が、株式市場に大きな影響を与えます。

株価は、企業が将来生み出す利益やキャッシュフローを、現在価値に割り引いて評価したものと考えることができます。そのときに使われる割引率の土台になるのが金利です。金利が低いと、将来の利益の現在価値は高く評価されやすくなります。逆に金利が高くなると、将来の利益を割り引く率が高くなるため、同じ利益見通しでも株価の理論価値は低くなります。

とくに影響を受けやすいのが、グロース株です。

AI、半導体、クラウド、SaaS、バイオ、宇宙関連、データセンター関連など、将来の高成長を期待されて高いPERがついている銘柄は、利益の多くが「将来」に期待されています。
金利が上がると、その遠い将来の利益をより高い割引率で現在価値に戻すことになるため、株価の下押し圧力が強くなります。

金利上昇局面で、ナスダックや半導体株、高PERの成長株が売られやすいのはこのためです。

ここで大切なのは、「名目金利が上がった」という表面的な現象だけで判断しないことです。

重要なのは金利上昇の中身です。つまり、その金利上昇が期待インフレ率の上昇によるものなのか、それとも実質金利の上昇によるものなのかを分けて考えることが必要です。

名目成長を伴うインフレは株高要因

期待インフレ率が上がっているだけであれば、背景には名目成長率の上昇、企業売上の増加、景気の強さがある場合もあります。この場合、企業が価格転嫁できていれば、株式市場にとって必ずしも悪いインフレとは限りません。

株式市場が警戒する金融環境の引き締まり

ただし、すべての金利上昇が株式市場にとって追い風になるわけではありません。実質金利が上がる局面は、株式市場にとってより警戒を要します。

実質金利が上がるということは、インフレを差し引いた後の資金調達コストが上がるということです。

企業は借入コストが上がり、設備投資やM&Aを慎重にせざるを得なくなります。家計も住宅ローンや自動車ローンの負担が重くなり、消費を抑える方向に動きやすくなります。

つまり、実質金利の上昇は、企業活動にも個人消費にもブレーキをかけます。株式市場が本当に嫌うのは、単なる物価上昇ではなく、実質金利の上昇を伴う金融環境の引き締まりです。

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