はじめに

2026年春の米国市場はインフレ再加速を警戒

図
2026年5月時点の相場は、まさにこのフィッシャーの法則を使って読み解くべき局面にあります。

米国では4月の消費者物価指数、CPIが前年同月比3.8%上昇し、3月の3.3%から加速しました。食品とエネルギーを除いたコアCPIも前年同月比2.8%上昇し、前月の2.6%から伸びが高まりました。

エネルギー価格の上昇が物価を押し上げる

特にエネルギー価格は前年同月比17.9%上昇、ガソリン価格は28.4%上昇しており、インフレ再加速の背景には中東情勢や原油高の影響が強く出ています。

ここで重要なのは、インフレの中身です。なぜなら、現在のインフレは、需要が強すぎることで起きている面、つまりディマンドプルインフレだけでなく、エネルギー価格という供給側のショックによって押し上げられている側面があるからです。

需要が強く、賃金も上がり、企業が価格転嫁できるインフレであれば、企業利益にとってプラスに働くこともあります。しかし、原油高や地政学リスクを背景としたインフレは、企業にとってコスト増となり、家計にとっては可処分所得の圧迫となります。つまり、売上増よりもコスト増の負担が大きくなりやすい「悪いインフレ」、すなわちコストプッシュ型のインフレになりやすいのです。

FRBの利下げ判断を難しくする物価高

FRBが重視するPCE価格指数を見ても、インフレはまだ2%目標に十分近づいたとは言いにくい状況です。

2026年3月のPCE価格指数は前年同月比3.5%上昇し、食品とエネルギーを除くコアPCE価格指数も3.2%上昇しました。FRBにとってコアPCEは基調的なインフレを見るうえで重要な指標ですから、この水準が続く限り、早期の利下げには慎重にならざるを得ません。

4月のFOMC声明でも、FRBはインフレが高止まりしていることに加え、中東情勢が経済見通しの不確実性を高めていると指摘しました。

FRBは長期的に2%のインフレを目標としていますが、足元では雇用と物価の両面のリスクを注視せざるを得ない状況です。つまり、景気がやや鈍化しているからといって、すぐに利下げに動ける環境ではありません。原油高によるインフレが続けば、FRBは景気への配慮と物価抑制の間で、非常に難しい判断を迫られます。

実質金利2%台が株価の重荷

このような環境では、債券市場が敏感に反応します。米10年国債利回りは、5月にかけて上昇基調を強めており、市場では、インフレ懸念や中東情勢を背景に、10年金利が4.7%台を試す可能性が意識されています。 また、10年TIPS利回り、つまり米国の10年実質金利は、2026年5月19日時点で2%台前半とされ、過去1カ月で上昇しています。

この「実質金利が2%を超えている」という点は、株式市場にとってかなり大きな意味を持ちます。

なぜなら、インフレを差し引いても安全資産である米国債で一定の実質リターンが得られるなら、投資家は高いリスクを取って株式を買う際に、より厳しい目線で企業利益やバリュエーションを見るようになるからです。特に、PERが高く、将来成長を前提に買われてきた銘柄は、「この株価水準を正当化するほどの成長が本当に続くのか」という問いを突きつけられます。

ここで個人投資家が意識したいのは、株式市場が単に「金利上昇=株安」と機械的に動いているわけではないということです。

金利が上がっても、企業利益がそれ以上に伸びると市場が判断すれば、株価は上がることもあります。実際、AI関連や半導体関連の一部には、金利上昇にもかかわらず強い需要期待から買われる局面があります。

しかし、金利上昇が長引き、実質金利が高止まりし、なおかつ原油高でコストが上がるとなると、株式市場全体のPERには下押し圧力がかかりやすくなります。

日本株にとっても、この問題は他人事ではありません。

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