はじめに
読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回は内藤忍氏がお答えします。
ゲーム関連の株式を買ったところ、思いの外、値上がりして資産の半分程度を占めるにいたりました。先の相場は読めないものですし、急に上がった分、もう売り切ったほうがよい気もしています。ただ、一気に同じ株式を買ってはいけないのと同様に、まとめて売るのもよくないのでしょうか? ご意見いただけますと幸いです。
(20代後半 独身 男性)
内藤: ご質問ありがとうございます。
「損は確定したくない」人間心理
個別銘柄の投資においては、「どこで買うか」が重要ですが、同時に「どこで売るか」も慎重に考える必要があります。
個人投資家の多くは、値上がりするとすぐに売却し利益を確定してしまい、逆に値下がりした際の損切りが遅れる傾向があるとわかっています。
これは行動ファイナンスの世界で「プロスペクト理論」と呼ばれ、利益は確定したがるが損失は確定したがらないという人間心理によるものです。
今回のようなケースでは、利益が出ている株式の利益をいかに伸ばしていくかを考えるべきなのです。
トレーリングストップとは?
そのひとつの方法として逆指値注文を活用した「トレーリングストップ」という手法があります。
逆指値とは指値注文と逆の注文方法です。指値注文が「上がったら売り、下がったら買い」という注文であるのに対し、逆指値注文は「上がったら買い、下がったら売り」となります。
例えば現状の株価が1,000円なら、900円以下に下がったら売りという逆指値注文を入れておくのです。もし株価が下落すれば900円で成行注文の売却ができますし、そこまで下がらなければ、さらに株価が上昇した際の利益を得ることができます。
株価が1,200円になれば、逆指値を1,100円に変更するというように、現状の株価の下に逆指値の水準を調整していくことでその価格までの利益を確定しつつ、上値を狙う投資が実現できるのです。
逆指値には利食いが早くなってしまうという投資家の行動を抑制する効果があるのです。
対応できない動きをする銘柄も
ただし、逆指値の水準はあまり現在の株価に近いと意味がなくなります。また、あまり離れすぎると利益幅が縮小してしまいます。過去の株価の変動率を参考に逆指値のレベルを調整していくとよいでしょう。
利益を少しでも伸ばすという観点からは有効な手法ですが、投機的な資金が流れ、仕手株的な動きになっている銘柄の場合は注意が必要です。上昇が止まり資金が一気に逆方向に向かうと、買い手がいなくなりストップ安が続くようなケースもあります。
流動性が低い銘柄については、トレーリングストップでは対応できない局面があることを知っておきましょう。
いずれにしても保有資産の半分以上が1銘柄というのは明らかに集中しすぎです。銘柄の分散を意識して資産運用するように心がけてください。