はじめに
日本銀行(日銀)が6月16日に政策金利を1.0%に引き上げることを決めました。日銀の動向は、預金、住宅ローン、投資信託、保険など私たちの身の回りのお金と直結しています。
日銀はなぜ「利上げ」「利下げ」をするの?
日銀は、日本で唯一の「中央銀行」です。政策金利を上下することで景気や物価をコントロールしています。
インフレはほどよいレベルであれば問題ないのですが、過熱しすぎると給与よりも物価が常に高い状態が続き、国民の生活が苦しくなっていきます。こんなときは、政策金利を引き上げてインフレを抑え込んでいきます(利上げ)。金利が上がれば、預貯金の金利も上がり、世の中のお金は預貯金に移っていきます。
金利が上がればお金は借りにくくなるので、市場に流通するお金が減っていきます。こうした流れでインフレが収束へと向かいます。
一方で、「景気が悪くなる=消費が低迷する」と、モノの価格が下がるデフレが起こります。しかし、デフレになると給与も下がっていきますのでますます消費が落ち込んでいきます。
こんなときは、政策金利を引き下げてデフレを抑え、景気を刺激します(利下げ)。金利が下がれば、預貯金に置いたままではほとんど増えませんので、消費に回りやすくなります。また、金利が下がればお金を借りやすくなるので、市場に流通するお金が増えていきます。こうした流れからデフレが収まり、好景気へと向かうというわけです。
日銀は、年8回開催する「金融政策決定会合」で景気の状態を確認して、政策金利を決定しています。長らく「マイナス金利政策」といって、民間の金融機関が日銀にお金を預けると損する状態を作ってまで景気を引き上げようとしてきました。そのマイナス金利政策は2024年3月に解除。以後4度にわたる利上げが行われ、2026年6月時点の政策金利は1.0%となっています。
金利上昇は「預金」「個人向け国債」「投資信託」「株式」にどんな影響がある?
●普通預金・定期預金
マイナス金利が解除されるまで、普通預金金利は年0.001%(以下金利・金額はすべて税引前)でした。2026年6月時点の大手銀行の普通預金金利は年0.3%ですが、8月から年0.4%に引き上げられる予定です。
定期預金は、年1%を超える商品が増えていて、一部の銀行では年1.4%となっています。8月以降はもっと高い水準の商品が出てくることが予想されます。
●個人向け国債
個人向け国債は国が発行する債券です。保有中、半年に1度利息が得られ、満期になると元本が戻ってきます。金利が満期まで一定の「固定3年」「固定5年」と、金利が半年ごとに見直される「変動10年」の3つのタイプがあります。
マイナス金利が解除されるまで、個人向け国債の金利は下限の年0.05%でしたが、2026年6月募集分の「固定3年」は年1.51%、「固定5年」は年1.86%、「変動10年」は年1.74%となっています。
個人向け国債は、元本割れしない商品であり、日本一安全な資産とされます。いわゆる「無リスク資産」ですが、無リスクで年2%近くの金利収入が得られる時代となりました。
●投資信託(債券に投資する商品)
投資信託は、投資家から集めたお金を、運用のプロ(ファンドマネージャー)が運用してくれる金融商品です。投資信託の投資先は株、債券、不動産(REIT)、金などさまざまで投資信託ごとに異なります。
金利上昇によって、影響がある商品は主に債券に投資する投資信託です。国内債券に投資する投資信託を保有している場合、金利が上昇すると値下がりする傾向にあります。
債券の金利と債券価格の間には、シーソーのような関係があります。つまり、市場金利が上がると債券価格は下がり、市場金利が下がると債券価格は上がる仕組みになっています。
たとえば、金利が1%の債券を持っているとします。市場金利が2%になったとしたら、以後は金利が2%の債券が発行されることになります。そうなれば、誰もが1%の債券よりも2%の債券を欲しいと思うでしょう。金利1%の債券の魅力が薄れ、欲しい人が減り、債券価格が下落します。
上述の個人向け国債は価格変動がないので安心ですが、投資信託を通じて債券に投資をしている場合は、金利上昇は向かい風になります。
●株式投資(株に投資する投資信託含む)
金利上昇は、一般的には株価の下落要因です。金利が上がると、インフレ抑制・景気抑制につながるためです。また、金利が上がると株価変動リスクをとらなくても、価格変動リスクの小さい債券で相応のリターンが得られるため、債券価格上昇・株価下落の要因となります。
ただ、話は単純ではありません。日銀が金利を引き上げたにもかかわらず日本株は上昇を続けています。
要因としては、「持続的なインフレが続いていく見通しだから」「金利がインフレ率を下回っているから」「AI・半導体関連銘柄が株高を牽引しているから」などありますが、中でも影響が大きいと考えられるのが、市場の「金余り」の状況です。
コロナ以降、停滞した経済を立て直すために、中央銀行は政策金利を引き下げたり金融緩和を行ったりと、さまざまな経済対策を行いました。市場が金余りになると、株など他のリスク資産に流入し、それが資産価格を押し上げていきます。