はじめに
「インボイスの2割特例、もうすぐ終わるらしい」——そんな話を聞いて、不安になっているフリーランスや個人事業主の方は多いのではないでしょうか。ただ、終了に備えて「簡易課税に切り替えよう」「法人化しよう」といったネットの情報に、あわてて飛びつく必要はありません。個人には終了後も2年間の「3割特例」が用意されていて、しかもどれが有利かは業種によって変わります。今回は、2027年以降に「やるべきこと」と「慌てなくていいこと」を、業種別に整理します。
2割特例は2026年分で終了。でも個人には「3割特例」の2年がある
2割特例は、インボイス登録を機に免税事業者から課税事業者になった人が、売上で預かった消費税のうち2割だけを納めればよい、という負担軽減策です。これが令和8年(2026年)9月30日を含む課税期間で終了します。個人事業主の多くは1月〜12月の暦年課税なので、実質的には2026年分の確定申告(2027年春)が最後となります。
ただし、令和8年度の税制改正により、個人事業者の令和9年(2027年)・令和10年(2028年)分の申告に「3割特例」が設けられることになりました。売上で預かった消費税の3割を納めればよい制度です。対象は2割特例と同じで、インボイス登録を機に課税事業者になった、基準期間(2年前)の課税売上高が1,000万円以下の人。もともと売上が1,000万円を超える事業者は対象外です。
事前の届出は不要ですが、確定申告書にこの特例を使う旨を付記する必要があります。手軽さは2割特例と同じです。詳しくは後述しますが、3割特例は法人には適用されません。
数字のインパクトも押さえておきましょう。2割から3割は「1割の差」に見えますが、納税額で見ると約1.5倍です。たとえば預かった消費税が100万円なら、納税は20万円から30万円へ。“たった10%”ではなく“1.5倍”と捉えるほうが、資金繰りの実態に近いです。
業種別に有利・不利が。3割特例でいくか、簡易課税に切り替えるか
2割特例を使えていたみなさんの2027年以降の悩みどころは、3割特例(30%)でいくか、簡易課税に切り替えるかの二択ではないでしょうか。
結論からいうと、どちらが得かは業種で決まります。簡易課税のみなし仕入率が70%を超える業種では簡易課税が有利で、70%未満なら3割特例が有利です。
本則課税(売上で預かった消費税から、仕入や経費で実際に支払った消費税を差し引いて納める方法)もありますが、帳簿づけが本格的で事務負担が重く、大きな設備投資をする年くらいしか出番がありません。そのため、通常は3割特例か簡易課税かを比較することになります。
そもそも簡易課税では、業種ごとに「みなし仕入率」が決められています。納付する消費税は、売上にかかる消費税からこの率を差し引いて計算します。たとえば卸売業はみなし仕入率が90%なので、預かった消費税の10%を納める計算です。
代表的な業種で比べると以下のとおりです。
卸売(みなし仕入率90%/消費税10%)・小売(みなし仕入率80%/消費税20%)
→簡易課税のほうが有利。切り替えを検討する価値あり
製造・建設(みなし仕入率70%/消費税30%)
→ほぼ同じ。手間のかからない3割特例が優位か
飲食・サービス・不動産(みなし仕入率40~60%/消費税40〜60%)
→3割特例のほうが有利。簡易課税に切り替える必要は薄い
ライターやデザイナー、コンサルタントなど、フリーランスに多いサービス業は最後のグループに入ります。したがって、こうした業種の方は、あわてて簡易課税に切り替える必要は薄いといえます。
ただし、複数の事業を営む場合は、単純な比較ではなく、実際の経費の中身や事業の組み合わせを踏まえた検討が必要です。
なお、簡易課税には一度選ぶと2年縛りがあります。切り替えるかどうかは、業種別の有利不利を慎重に確認してから決めるのが安心です。