はじめに
高配当株投資では、配当利回りの高さに目が向きがちですが、それだけでは企業の本当の魅力は判断できません。長期で資産形成を目指すなら、利益成長力や財務体質、株主還元方針など、配当を将来にわたって支えられる企業かどうかを見極めることが重要です。本稿では、配当利回りだけにとらわれず、高配当株を分析する際に確認したいポイントを整理します。
配当利回りだけでは判断できない高配当株投資の基本視点
高配当株投資というと、「配当利回りが高い銘柄を買う投資」というイメージを持たれがちです。
配当利回りは「1株当たり年間配当金 ÷ 株価 × 100」で計算されます。株価が大きく下がる際には利回りは高くなります。そのため、急落に備え、長期投資で利回りを狙う銘柄を安く買うために良い銘柄のリストを作っておくことは合理的な行動だと考えています。
ただ高配当を狙う投資で気をつけておかねばならない点として、業績悪化による株価下落で利回りが高く見えているだけではないかを確認する必要があります。配当利回りと配当性向はセットで見ることが重要です。配当性向が高すぎる場合は、減配リスクが高まることがあります。
長期で資産を増やしたいのであれば、本当に見るべきなのは配当利回りではなく、その配当を将来も支え続けられる企業かどうかです。
株主還元方針の変化と企業分析で確認したいポイント
近年、日本企業の株主還元は大きく変わり始めています。2023年に東京証券取引所が資本コストや株価を意識した経営を求めたことで、多くの企業が株主還元を経営戦略の一つとして位置付けるようになりました。その結果、累進配当の導入やDOE(株主資本配当率)の採用、自己株式取得の拡大といった発表が急速に増えています。これは一時的な流行ではなく、日本企業の資本政策そのものが変化している流れと考えられます。
だからこそ、高配当株投資では、単純な配当利回りだけではなく、企業がどのような考えで株主還元を行っているかという視点が欠かせません。私が高配当株を分析する際、まず確認するのは配当利回りではなく、企業の利益成長力です。
配当の原資は利益です。利益が増えなければ、配当も長期的には増やせません。そのため、EPS(1株当たり利益)が中長期で伸びているか、利益率は改善しているか、本業の競争力は高いか(「経済的な堀」を意味するMOATなどの定性面の強み)を確認します。
そのうえで、営業キャッシュフローやフリーキャッシュフローを確認します。配当は現金で支払われるため、利益が出ていても現金を十分に生み出せない企業では、配当の持続性に不安が残ります。反対に、本業で安定してキャッシュを生み出せる企業は、景気変動局面でも株主還元を継続しやすくなります。
さらに重要なのが財務体質です。自己資本比率やネットキャッシュ、有利子負債の水準などを確認し、景気後退局面でも配当を維持できる余力があるかを見極めます。高配当株投資では、利回りの高さ以上に財務の強さが安心感につながります。