はじめに

株式市場が好調です。AI関連株を中心に世界の株価は高値圏にあります。しかし、こうした強気相場の裏側で、金利が世界的に上昇しています。なぜ金利が上がっているのでしょうか。

通常、金利上昇と聞くと、まず思い浮かぶのがインフレです。物価が上がり続ければ、お金の価値は目減りします。そのため投資家は、長期間お金を貸すなら、その分だけ高い利息を求めます。中東情勢の緊迫化によって原油価格が上昇すれば、インフレが再燃し、長期金利が上昇する可能性があります。

もう一つは、政府の財政赤字です。それをまかなうために米国をはじめ各国政府は巨額の国債を発行しています。日本も高市政権の積極財政で国債の増発が懸念されています。国債の発行が増えれば、それを買ってもらうためには、より高い金利が必要になります。つまり市場では、「お金を借りたい人」が増えています。

ところが、最近ここに新たな巨大な借り手が登場しました。AIです。


AIは巨大な「設備投資産業」

AIというと、ChatGPTのようなソフトウエアをイメージする人が多いでしょう。しかし、その裏側には巨大な設備があります。AIを動かすには高性能な半導体が必要です。それを大量に並べるデータセンターも必要です。さらにデータセンターを動かすためには、膨大な電力が必要になります。半導体、サーバー、データセンター、発電設備、送電網、etc.。AIブームとは、実は世界的な「巨大設備投資ブーム」でもあるのです。

そして設備を造るには、お金が必要です。これまでグーグルやアマゾン、マイクロソフトなどの巨大IT企業は、豊富な手元資金で投資をまかなうことができました。しかしAI投資があまりにも巨大になったため、状況が変わり始めています。企業が社債を発行したり、銀行などから資金を借りたりして、外部からお金を調達するケースが増えています。つまり、世界有数のお金持ち企業まで「お金を貸してください」と言い始めているのです。

世界で始まった「資本の奪い合い」

ここで重要になるのが「資本の奪い合い」です。政府は財政赤字を埋めるために国債を発行する。企業はAI投資のために社債を発行する。データセンター会社も資金を借りる。電力会社も発電所や送電網への投資資金を必要とする。みんなが同時に市場からお金を集めようとしています。そうなれば、お金の値段である「金利」は上がりやすくなります。

最近の動きはかなり急です。2026年の米国では、AI関連の社債発行が急増し、投資家側にも消化疲れの兆候が出始めています。大量の債券を買ってもらうため、企業が以前より高い利回りを提示するケースも増えています。

ここで、金利について少し整理しておきましょう。中央銀行が直接動かすのは「政策金利」です。その影響を強く受ける短期金利は、中央銀行の金融政策によって大きく左右されます。

一方、10年、20年、30年といった長期金利は、それだけでは決まりません。将来の政策金利がどうなるかという予想に加えて、今後のインフレ率や経済成長率、政府による国債発行の増減、そして債券市場の需給など、さまざまな要因によって決まります。

もう一つ重要なのが「タームプレミアム」です。簡単にいえば、投資家が長い期間にわたってお金を貸すことに対して求める「上乗せ金利」です。将来のインフレや財政、金利の見通しが不透明になれば、「10年、20年もお金を貸すなら、もう少し高い金利が欲しい」と投資家は考えます。その分、長期金利には上昇圧力がかかります。

そして、いま注目したいのが「資金の需給」です。政府が大量の国債を発行する一方で、企業もAIやデータセンターへの巨額投資のために社債を発行し、市場から資金を集めようとしています。電力会社も発電所や送電網への投資資金を必要とします。世界中で巨額の資金需要が同時に発生しているのです。

市場にお金が豊富にあったとしても、それ以上の勢いで「お金を借りたい」という需要が増えれば、より高い金利を提示しなければ資金を集めにくくなります。つまり、中央銀行が政策金利を引き上げなくても、AI投資などによる巨大な資金需要や債券市場の需給悪化、さらにはタームプレミアムの上昇を通じて、長期金利が押し上げられる可能性があるのです。

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