はじめに
読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回の質問者はサイドFIREを希望する資産7,450万円の男性。サイドFIRE後も今の生活を維持するために必要な年収が気になるそうですが…? FPの秋山芳生氏とシミュレーションしてみましょう。
2021年に相談させていただいた者です。あれから5年が経ち、状況が大きく変わったため、改めて相談させてください(2021年の相談記事はこちら:https://media.moneyforward.com/articles/6821?af=authors_list)。
前回の相談後、幸運にも2人の子宝に恵まれました。一方で、マンションが手狭になったため売却し、運よくまとまった売却益も出ました。今後しばらくは賃貸で過ごすつもりです。先の環境変化が読めないことに加え、借金ゼロの身軽な状態で、状況に応じて柔軟に動けるようにしておきたいからです。物欲もここ数年でかなり減り、衣服などの断捨離も進めました。
今回の相談はサイドFIREについてです。私が5年後、妻が10年後を目処に会社員を辞め、会社員以外の働き方へ移行するつもりでいます。2人とも現在の仕事が嫌なわけではありません。ただ、セカンドキャリアとして子どもたちと過ごす時間を増やしたいこと、そして少しでも世の中の役に立てる生き方・仕事をしたいと考えたためです。そのため、資産形成と新しい仕事の準備を進めています。
そこで、5年後・10年後の資産額の概算と、4人で生活していくために必要な私と妻それぞれのサイドFIRE後の年収を教えてください。特に、子どもたちには遊びと教育面で不自由をさせたくなく、地方への移住は現時点では考えていません。また、サイドFIREや会社員以外の働き方を選ぶ人へのアドバイス・忠告もいおねがいします。
【相談者プロフィール】
・男性、45歳、既婚、会社員
・妻:35歳
・子ども:0歳、2歳
・お住まい:賃貸
・毎月の世帯の手取り金額:65万円
・年間の世帯の手取りボーナス額:90万円
・その他:児童手当 月額4万円
【毎月の支出の内訳】
・毎月の世帯の支出の目安:62万円
・住居費:19万円
・食費:30〜40万円(交際費・交通費・小遣い・日用品・教育費などすべて)
・水道光熱費:3万円
・保険料:1,200円(妻の医療保険、家族全員の自転車保険) ・通信費:0円(株主優待)
・車両費:0円
【資産状況】
・毎月の貯蓄額:なし
・ボーナスからの年間貯蓄額:なし
・現在の貯金総額:600万円
・年間の投資総額:720万円。夫婦共に旧NISAから始め、2024年からは毎年360万円ずつ埋めています。成長投資枠分は特定口座を売却して捻出し、積み立て投資枠分は給与から捻出(クレジットカード払い)。NISA枠が埋まった後の2029年からは特定口座で、それぞれ月10万円ほど投資を継続する予定です(合計240万円/年)。
・現在の投資総額:投資信託:5,500万円 、iDeCo:450万円、日米個別株:900万円
・現在の負債総額:なし
・住宅ローン:なし
・教育費:未定ですが、小中は公立、高校は私立、大学は理系・文系どちらでも。大学は自宅から通学。
・その他:退職金なし
今回のテーマは「サイドFIRE」。5年後にご主人、10年後に奥様がそれぞれサイドFIREを目指すとのことですので、まずは現在の家計・資産状況を確認し、その上で資産の増え方をシミュレーションしていきましょう。
この5年間で何が変わったかを把握する
この5年で最も大きな変化は、お子さんが2人生まれたことでしょう。世帯の手取り収入は月65万円、ボーナス90万円に児童手当が加わり、年間の世帯手取りは918万円ほどになります。
また、マンションを売却して賃貸に切り替えられた点も重要です。前回の相談時は「60歳までに住宅ローンを完済したい」というご相談でしたが、今回は負債ゼロ。売却益も出た上で、環境変化に応じて柔軟に動ける状態を維持したいというお考えは、サイドFIREという不確実性の高い選択をする上で、理にかなった判断だと思います。物欲が減り、断捨離が進んだというのも、生活コストを抑えながら人生の満足度を保つ上で大きな武器になります。
資産状況は良好。しかし、気になる項目も
まず資産状況を整理します。現在の資産は、貯金600万円、投資信託5,500万円、iDeCo450万円、個別株900万円で、合計すると約7,450万円。負債はゼロです。40代半ばでこの水準は、かなり順調な資産形成ができていると言えるでしょう。
ただし、年間投資額720万円という数字は少し注意が必要です。この内訳は、成長投資枠分(お二人合わせて480万円)が特定口座を売却して捻出されたもの、積立投資枠分(同240万円)が給与から新たに拠出されたものです。つまり720万円のうち480万円は「特定口座からNISA口座への資産の入れ替え」であり、新規の資産純増ではありません(売却時の税金は簡略化のため考慮しません)。実質的な資産の純増加額は月10万円ほど、年間で見ると120万円程度と見ておくのが実態に近いでしょう。
次に支出です。世帯の手取り918万円から生活費744万円(月62万円)を差し引くと、年間174万円ほどが残ります。このうち120万円が先ほどの純投資積立に回っているとすると、残り54万円ほどが特別費(旅行、家具家電、お祝い金など)に使われている計算になり、前回相談時と近い構造です。
また、水道光熱費以外の支出が30〜40万円と丸められており、内訳がわからず、何が適正なのか、何が使いすぎているのか、金額の大きさだけで判断するのは難しいところです。逆に言えば、この中に趣味や自己投資的な支出も含まれている可能性があり、闇雲に削る必要はないと思いますが、未就学児2人を含む4人家族で住居費を除いた支出が月30万円から40万円というのは、額だけ見れば高い水準です。また、10万円という幅があるのは家計の見える化という観点では少し粗いので、しっかりと家計簿をつけ、見直し、何にいくら使っているのかを把握すると、サイドFIRE後の生活費予測の精度も上がるはずです。
もう一点、気になるのが住居費です。月19万円は手取り65万円の約29%、3割弱を占めています。前回相談時の住居費比率は23%でしたので、それより高い水準です。賃貸は身軽さが最大のメリットですが、サイドFIRE後に収入が下がった状態でもこの家賃水準を維持し続けるとなると、家計を圧迫する要因になり得ます。住み替えや家賃交渉も、選択肢として検討の余地があるかもしれません。