はじめに
半導体メモリー大手のキオクシアが株式3分割を実施しました。近年、日本企業による株式分割が相次いでいますが、その背景には東証の取り組みや新NISAの普及、日本株の上昇があります。株式分割によって株価が下がることと、株式が割安になることは別の話です。キオクシアを例に、株式分割が増える背景や企業側の狙い、個人投資家が押さえておきたい投資判断のポイントを解説します。
キオクシアの株式3分割で変わる株価と投資単位
半導体メモリー大手のキオクシアホールディングス(285A)が2026年9月30日を基準日として、普通株式1株を3株に分割しました。効力発生日は10月1日ですが、株式市場では9月29日から分割を反映した株価で取引されています。分割前には5万円台だった株価は1万7000円台となり、9月29日の終値は1万7880円でした。
株価だけを見ると、一気に3分の1になり、「キオクシア株が安くなった」と感じる方もいるかもしれません。しかし、株式投資ではここを混同しないことが大切です。「株価が安くなること」と「株式が割安になること」は、まったく別の話だからです。
そして最近、日本企業による株式分割が相次いでいます。その背景には、日本株の上昇だけでなく、2024年に始まった新NISAや、東京証券取引所が進めている投資単位引き下げの動きがあります。
今回はキオクシアの株式分割を入口に、株式分割とは何なのか、なぜ今、分割する企業が増えているのか、そして投資判断では何を確認すべきなのかを考えてみたいと思います。
まず、株式分割の仕組みを確認しておきましょう。今回のキオクシアは、1株を3株に分割しました。例えば分割前に100株を保有していた場合、分割後には300株になります。
仮に分割前の株価を5万4000円とすると、100株の時価は540万円です。1対3の株式分割後には、理論上の株価は1万8000円となりますが、保有株数は300株に増えるため、時価は同じ540万円です。
企業価値や企業の時価総額も理論上は変わりません。1株当たり利益であるEPSも分割比率に応じて調整されるため、PERも基本的には変わりません。
なお、株式分割の基本的な仕組みやメリット・デメリットについては、過去の記事でも詳しく解説しています。
過去記事: 狙いは【新NISA】か――増える株式分割、発表した銘柄の株価はどう動いた?
では、それでも企業が株式分割を行うのはなぜでしょうか。大きな理由の一つが、投資単位を引き下げることです。日本株は原則100株単位で売買します。株価が5000円なら最低投資金額は約50万円ですが、株価が5万円なら約500万円が必要です。
今回のキオクシアも、分割前には100株を購入するために500万円以上必要な水準でした。3分割によって170万円台まで下がったことで、これまで投資金額の面から対象外としていた投資家にも選択肢が広がったと考えられます。
企業価値は変わらなくても、株式への「アクセスのしやすさ」は変わる。ここに株式分割の重要な意味があります。