はじめに

成長株の決算とPERに織り込まれる期待

図

特に注意したいのが、AIや半導体など、将来の高い利益成長が期待されている企業です。こうした企業では、好業績を発表すること自体が、ある程度当然のこととして受け止められている場合があります。2026年7~9月期の米国企業の決算について、ファクトセットが10月5日に公表したデータでは、事前にEPS見通しを発表していたS&P500構成企業116社のうち、72社が市場予想を上回る強気の見通しを示していました。この72社という数字は、同社が2006年に集計を開始して以来の最多です。なかでも情報技術セクターが44社を占めており、ソフトウエア企業や半導体関連企業を中心に業績期待が高まっていることが分かります。

期待が高いということは、それだけ決算発表時のハードルも高くなるということです。たとえば、ある企業の来期予想EPSが500円、株価が1万円であれば、予想PERは20倍です。ここで利益成長期待が高まり、PERが30倍まで上昇すると、EPSが変わらなくても株価は1万5000円になります。しかし、決算発表を受けて投資家の成長期待が後退し、予想PERが25倍に低下した場合、株価は1万2500円となります。EPSが500円のままでも、株価は約16.7%下落する計算です。

実際には、株価は利益予想と、投資家がその成長に対して許容するPERの両方によって変化します。さらに、PERには金利環境も影響します。一般に金利が上昇すると、将来の利益を現在価値に割り引く際の割引率が高くなり、遠い将来の成長に大きな期待が寄せられている企業ほど、株価の評価が厳しくなる傾向があります。そのため、決算が良くても米長期金利が急上昇している局面では、株価の上値が抑えられる可能性があります。反対に、業績予想が維持されているなかで金利が低下すれば、PERの上昇によって株価が押し上げられることも考えられます。決算分析では、個別企業の利益成長と、株式市場全体のバリュエーション環境を分けて考えることも必要です。

好決算後の株価下落と投資判断

では、好決算を発表したにもかかわらず株価が大きく下落した銘柄は、買いのチャンスなのでしょうか。個人投資家にとって悩ましいのが、この判断です。たとえば、営業利益が20%増加し、会社側が通期業績予想を上方修正したにもかかわらず、株価が10%下落したとします。こうした場合、すぐに割安になったと判断するのではなく、まず下落の理由を整理することが大切です。

決算発表前の株価上昇による利益確定売りなのか、それとも翌期以降の成長鈍化を市場が警戒しているのかによって、投資判断は変わります。特に注目したいのが、決算発表後のアナリストによる業績予想の修正です。決算発表直後には株価が下落しても、その後、翌期のEPS予想が上方修正されるのであれば、利益成長に対する評価が改めて高まる可能性があります。一方、株価が下落したうえに、翌期の利益予想も引き下げられている場合は、企業価値の見直しが続く可能性があります。

さらに、決算後に株価が下落した銘柄を検討する際には、予想PERがどの程度変化したのかも確認したいところです。たとえば、決算発表前の株価が5000円、予想EPSが200円だった企業の予想PERは25倍です。決算発表後に株価が4500円まで下落した一方、会社側の業績見通しが上方修正され、予想EPSが220円に引き上げられた場合、予想PERは約20.5倍に低下します。株価は10%下落していますが、予想EPSは10%増加しているため、利益に対する株価の評価は大きく低下したことになります。このようなケースでは、事業環境や成長見通しに大きな変化がなければ、投資妙味が高まっている可能性があります。

ただし、PERが低下したからといって、必ずしも割安とは限りません。市場が翌期以降の成長鈍化や業績悪化を先取りしている可能性もあります。そのため、株価下落率だけで判断するのではなく、利益予想の変化とPERの変化を合わせて確認することが重要です。

投資管理もマネーフォワード MEで完結!配当・ポートフォリオを瞬時に見える化[by MoneyForward HOME]