はじめに

小売業界がアマゾンに反旗

ですが、こうした現状を「良し」としない企業群があります。ウォルマートやメイシーズをはじめとした小売業界です。


ウォルマートをはじめとした小売業界で「逆アマゾン効果」が広がりを見せている(写真:ロイター/アフロ)

米国の小売業界では今、「アマゾンエフェクト(効果)」が問題になっています。アマゾンが成長するたびに小売業者が倒産していくという逆相関が日増しに強まっているのです。

こうした中で、米国の大手小売業者では、いくらAIによる高度な顧客分析機能が簡単に使えるからといって、自社の販売データをアマゾンに預けてもいいのか、という問題が提起されています。

これが「逆アマゾン効果」です。ライバル関係にある小売り企業には、アマゾンに安心してデータを預けることができないという事情が存在しているのです。

グーグルとも組みづらい事情

では、アマゾンに対抗するにはグーグルがいいのでしょうか。実はこれも大きな問題を抱えています。

というのは、グーグルは検索やGメール、グーグルカレンダーのように無料のサービスを提供する代わりに、顧客の利用データを受け取って、そのビッグデータをAIが分析することで、より良い広告を高く売って儲けるという会社だからです。

グーグルに集客してもらうため、ネット通販企業は合計するとものすごい金額の広告料を支払っています。そのような企業に顧客データを預けたら、自分たちの顧客データがいいように使われて、将来的にはその分析結果を有料でグーグルから買うことになるかもしれません。

残された選択肢はマイクロソフト

つまり、アマゾンは競合だから、そしてグーグルは広告会社だからという理由で、実店舗で展開している小売り各社は自社のデータを安心してクラウドに預けることができないのです。

こうした事情から、残された選択肢はマイクロソフトだけになります。今回の同社の業績発表で注目されたのは、クラウド事業の伸び以上に、そこで明かされた事例でした。米国の小売り大手クローガーとロウズがマイクロソフトのクラウドを利用している事例が発表されたのです。

米国の小売業界がアマゾンとグーグルに対する警戒心を強めれば強めるほど、マイクロソフトがその受け皿になる。こうした現状が、クラウド3強の勢力図にどのような影響を及ぼすのでしょうか。ビッグデータを舞台にした現代版『三国志』は、まだ結末が見えそうにありません。

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