はじめに

2月に入ってプロ野球各球団の春季キャンプが一斉に始まりました。普段プロ野球を見ない方も、テレビのニュースなどでキャンプ風景が取り上げられていることはご存じでしょう。

公式戦の開幕は3月末ですが、3月に入ると公式戦に向けた練習試合的な位置づけのオープン戦が始まります。そのオープン戦のチケットが売り出されるのが今の時期です。

ほとんどのプロ野球のチケットは、開催月の前の月の初旬に発売になります。つまり、3月初旬になると、4月1ヵ月分のチケットが発売になるのです。

しかし、これとは別の発売ルールになっている球団が2つだけあります。阪神タイガースと広島東洋カープです。どちらも1年分をシーズン開幕前に一挙に売り出します。

したがって、他の球団では9月後半のゲームのチケットは8月初旬にならないと買えませんが、タイガースやカープのゲームはシーズン初めに買えてしまうのです。こうした事情が、広島で思わぬ問題を引き起こしています。


カープファン急増で争奪戦が激化

「カープ女子」という流行語まで誕生し、近年は全国的にファンが増えているカープ。そもそもは原爆で壊滅的な被害を受けた広島市の政財界の有志が、復興の願いを託して創設した球団です。

マツダという親会社がありながら、親会社は資金的な援助を一切しないため、運営は球団が地力でやっています。それだけに、資金的な危機は過去何度も経験していて、ファンがカンパで集めたお金を運営資金の一部に充てたこともあります。ですから、ファンは自分たちの球団、市民球団であるという自負があるのです。

それだけに経営姿勢は手堅く、ドケチそのもの。若い選手を自前でコツコツ育てる方針で、大金を積んで他チームの大物選手を連れてくるようなことはしません。

こういった属性は、日本人のメンタリティーにことごとく合致しますし、応援がシンプルかつ明るくて、見ず知らずのファン同士が盛り上がれてしまう。初めて球場に見に行って病み付きになる人が多いようです。

しかし、人気の上昇とともに、問題も起きています。本拠地であるマツダスタジアム開催ゲームのチケットの争奪戦が激化し、尋常ではない状況に陥っているのです。

去年は発売3日で全指定席が完売

カープは昔から3月1日に1シーズン分のチケットを一斉に売り出しています。球場に閑古鳥が鳴いていた期間が長く、少しでも多く、先のゲームまでチケットが売れるようにと考えてのことでした。

確かにカープは広島市民にとって特別な球団ではあるのですが、それが観客動員数に結びつかない時期が長く続きました。しかし、人気が出てくると、このチケットの売り方が仇になってきました。

球場窓口でチケットの販売を開始する毎年3月1日の前日、2月28日(閏年は2月29日)に球団は購入できる順番を決める整理券を配布します。その整理券を求めて、相当前から並ぶ人が現れ出しました。

地面にシートを貼って陣地を確保する人だけでなく、テントを張る人もいます。2月末に向けてテントの数はどんどん増えていく、というのが毎年この時期の恒例になっているのです。

球団はこの状況になっても1年分を一括で売り出す方針を変えていません。しかも、1人が買えるチケットの枚数に制限を設けていないので、窓口で2時間も粘り、500万円以上購入する人も現れました。

ですから、若い番号の整理券を入手できても希望の席を買えない人も出ているようです。結果、昨年は3月3日までにシーズン中の全指定席が完売してしまい、この時点で売れ残っていたのはビジター応援席と内野自由席だけという状況でした。