はじめに
UNO、人生ゲーム、モノポリー……。ボードゲームといえば、一番初めに何が思い浮かびますか。1970年代にブームを巻き起こしたボードゲームが今、再び脚光を浴びています。
現在、ボードゲームの種類は世界に2万点以上存在するといわれています。ボードゲーム愛好家が集まる祭典「ゲームマーケット」は参加者が年々増加。市場規模も拡大しています。
楽しみ方にも変化が起きており、ただプレーを楽しむだけでなく、自らゲームを作って楽しむフェーズへと進化しているそうです。ボードゲームの奥深い魅力について、探りました。
ルールは単純、だけど奥深い
JR高円寺駅から中野方面に徒歩1分。狭い路地を進むと、小さなビルの2階にオレンジの看板に「すごろくや」と書かれた小さなお店があります。600種類以上の商品を販売する、日本最大級のボードゲーム専門店です。
階段を上って、お店に足を踏み入れると、店員とお客さんが一緒になってテーブルを囲んでいます。大人4人がそれぞれ手にピースを持ちながら、白いボードのマスに4色のピースをパチッ、パチッとはめていきます。
繰り広げられていたのは、2000年にフランスで生まれた「ブロックス」というボードゲーム。ボードの隅にピースを置くところから始まり、そのピースと角が接触するように次のピースを置きながら、最後に一番多くピースを置くことができた人が勝ちです。
「ルールが単純なのに、奥深く遊べるのがブロックスの魅力です」と、すごろくやの丸田康司代表は話します。ブロックスのように複数人でテーブルを囲み、オフラインで一緒に楽しむボードゲームが、最近盛り上がりを見せているようです。
イベント参加者が年々増加
ボードゲームをはじめとした、“電源を使用しない”アナログゲームの愛好家が集まる交流イベントも活況を呈しています。
その1つが、年に数回、東京ビッグサイトなどで開催されている「ゲームマーケット」です。入場料が有料(1,000円)にもかかわらず、参加者数がここ5年で3倍以上に急増しています。
ゲームマーケットが初めて開催されたのは2000年。東京・神田にある小さなビルの一角で行われました。その後、区民会館などに開催場所を変え、2013年からは東京ビックサイトで開催できる規模にまで成長しました。
昨年12月のイベントでは、初の2日間開催を実施。「参加者からの強い要望で、2年かけてこの2日間開催が実現できるように調整してきました」と、同イベントの運営を担当する山上新介さんは話します。参加者数は2日間で1万8,500人と、過去最高を記録しました。
ボードゲームが大きくブレイクしたのは、2008年に米国でリリースされた「ドミニオン」(定価4,860円、税込み)がきっかけでした。
プレイヤーが領主となり、自分の領土を拡張する「トレーディングカードとボードゲームのいいとこ取りをしたカードゲームです」(丸田さん)。世界的なゲーム賞をいくつも受賞し、爆発的なヒットを記録したことで「ボードゲーム市場が3~3.5倍に拡大しました」と丸田さんは話します。
このドミニオン人気が追い風となり、他の輸入ボードゲームの国内流通版も次々と市場に出回るようになりました。東急ハンズや量販店などでも購入できるようになり、さらに市場規模が拡大。ボードゲームは公式な協会がなく正確な数字は不明ですが、丸田さんの試算によると、現在の市場規模は「30億円くらい」だといいます。
自分で作って販売する楽しみも
「大人が知的な能力を発揮しつつ、子供のように楽しめる」ことが、ボードゲームの面白さだと丸田さんは話します。
ボードゲームは論理的な思考が求められるものも多く、難しくなるほど「電化製品の説明書をしっかり読んで、そのうえで扱えるような素養が必要です」(丸田さん)。プレイヤーの多くは、大学生をはじめとした、20~30代の理系男性が多いそうです。
一方で、運によって勝敗が決まるゲームもあるので、お金をつぎ込んだ分だけ強いカードが手に入るトレーディングカードとも、時間をかけた分だけ強くなれるRPGゲームとも違い、プレイヤーの年齢の幅やスキルの差を埋められ、みんなが等しくゲームを楽しむこともできます。
ゲームを楽しんでいると、「次第に自分たちでボードゲームを作りたくなってくる人が多いんです」と丸田さん。プレイヤーが“ルールに手が届く”のも魅力の1つだといいます。
実際、ゲームマーケットでは、自らボードゲームを作って販売する「一般出展」の数が5年間で2.5倍に拡大。そうした好循環が、ボードゲーム市場をさらに盛り上げています。
「ゲームをどう攻略するか」を考えることで、中長期で物事を考える力や、リスクに対する考え方が身につくため、最近は子供の知育のために親子で来店するケースも多いそうです。ただ、「まずは、一緒に遊ぶ親がきちんとゲームを理解した上で、子供に合わせた使い方を考えることが重要です」(丸田さん)。
まだまだ奥深いボードゲームの世界。知名度の高い人生ゲームやモノポリーだけがボードゲームではありません。よく知られているUNOも、実はボードゲームの1つだそうです。知らなかったゲームを取り入れて楽しんでみれば、新しい発見があるかもしれません。
(文:編集部 土屋舞)