はじめに

水色のパッケージに描かれた、乳白色の液体とアーモンドの実。スーパーなどの飲料売り場で、この商品を目にしたことがある方も多いのではないでしょうか。

1910年設立の老舗メーカーが手掛ける、「アーモンド・ブリーズ」という名のアーモンドミルクです。欧米では、健康志向の高まりを受けて、牛乳の代替飲料として豆乳をしのぐ市場規模を獲得。日本には2013年に上陸しました。

そんなアーモンドミルクの先駆的ブランドが、3月から日本での製造・販売パートナーを改め、再出発を果たします。豆乳が大きなウエートを占める日本の乳代替品市場を、どんな戦略で切り崩していくのでしょうか。


素材感やコク味を前面に刷新

「牛乳の代替飲料として、われわれは欧米市場で成長・定着してきました。同じ成功を日本でも達成していきたい」。2月21日に開かれた記者発表会の冒頭、世界最大のアーモンド加工販売企業であるブルーダイヤモンド・グロワーズのデール・ティプル副社長は、そう力を込めました。

同社のアーモンドミルクのブランド「アーモンド・ブリーズ」は、3月5日にラインナップを一新。1リットルの大容量タイプ2種類(税抜き398円)と200ミリリットルのパーソナルタイプ6種類(同105円)を新たに発売します。

これまでのパーソナルタイプの商品は、オリジナルやコーヒー風味のほかに、バナナや抹茶などと掛け合わせたものを展開していました。今回のラインナップ見直しにあたっては、これをやめ、ココナッツやヘーゼルナッツといった他のナッツとのブレンド商品を新たに投入しました。

また、パッケージも刷新。従来よりもアーモンドの素材感を前面に出したものに見直しました。アーモンドミルクそのものもコク味を増し、日本人好みの味にしたといいます。

「豆乳の延長線上で独自性が訴求できず」

今回の一連のリニューアルの中で最も大きな変更点は、日本における製造・販売パートナーの刷新です。2013年の日本上陸以来、ライセンス契約を結んできたマルサンアイとの契約を昨年11月に解除。新たにポッカサッポロフード&ビバレッジと契約を締結し、日本国内での製造・販売を任せることになりました。

「以前のパートナー企業は(自社で手掛ける)豆乳の延長線上での展開に終始し、アーモンド・ブリーズの世界観や独自性を日本の生活者に訴求できていませんでした」。ポッカサッポロの大槻洋揮執行役員は、そう分析します。


手を携える、ブルーダイヤモンドのティプル副社長(中央)とポッカサッポロの大槻執行役員(右)

アーモンド・ブリーズの強みは、米カリフォルニア州の契約農家で作られたアーモンドだけを使用し、西海岸らしいスッキリとした味に仕上げている点。こうした特長を訴求することで、30~40代の、生活者としての意識が高い、ワーキングウーマンをコアターゲットとして取り込んでいく考えです。

欧米では豆乳をしのぐ市場規模に

とはいえ、アーモンドミルクは日本での知名度はまだ豆乳に遠く及びません。そもそも、どういう飲料なのでしょうか。

アーモンドミルクは、皮をむいたアーモンドを撹拌し、絞ったもの。牛乳よりも低カロリー、低糖質で、コレステロールもないのが特長です。「天然のサプリメント」とも呼ばれ、ビタミンEや食物繊維、オレイン酸が豊富だといいます。

こうした特性から、欧米では健康への意識が高い層を中心に需要が拡大。米国での市場規模は、2016年に15億ドル(約1,600億円)を突破したそうです。そのまま飲用するだけでなく、牛乳の代わりにコーヒーなどと混ぜて飲むのも一般的になっています。

日本では、2013年にアーモンド・ブリーズが上陸したほか、江崎グリコが「アーモンド効果」を発売し、市場が形成されました。2017年の市場規模は約60億円(ポッカサッポロ推定)まで拡大しました。それでも豆乳に比べると、その規模は10分の1程度にとどまります。

「乳代替飲料として、日本では豆乳がメインですが、米国ではアーモンドミルクがナンバーワン。豆乳よりも伸びしろは大きく、可能性に着目しています」(ポッカサッポロの大槻氏)

国内シェアは2年後に倍増狙う

同社はどうやって日本市場を切り崩していくのでしょうか。現在、アーモンド・ブリーズの国内シェアは15%程度。これを2020年までに、倍となる30%まで引き上げたい考えです。

そのための施策の1つが、冒頭でも触れた、他のナッツとのブレンド商品の強化です。これらのナッツ類は健康や美容に効果があるとされており、そうした効果に関心のある20~40代の女性を意識したラインナップを拡充していく方針です。

「市場の黎明期は200ミリリットルのパーソナルユースから入っていくのが鉄則。ただ、米国の事情を見ると、大容量商品が中心なので、将来的には砂糖不使用のリッタータイプに需要のウエートを持っていきたい」(ポッカサッポロの大槻氏)

また、常温で流通できる特性を生かし、ブルーダイヤモンドのナッツの国内販売を手掛ける伊藤忠商事と共同で、売り場を展開することも視野に入れています。さらに、業務用の営業部隊を活用し、アーモンドミルク鍋など中食や外食の企業への売り込みを強化します。

「ブリーズとは『そよ風』という意味。米国の健康的なライフスタイルを、そよ風とともにお届けしたい」。大槻氏はこう意気込みます。生活者の目線で、100年企業のブランド価値を訴求できるかが、アーモンド・ブリーズの再出発の行方を左右しそうです。

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