はじめに
先週で、1月期決算企業の決算発表がおおむね出そろいました。その中に、面白そうな会社を見つけました。昨年10月に東証マザーズに上場したばかりの「SKIYAKI(スキヤキ)」という名前の会社です。
面白いのは社名だけではありません。3月15日に発表した2018年1月期の決算は、売上高が前期比44.5%増、本業の儲けを示す営業利益は同69.6%増と、高い伸びを示しました。当初の会社予想と比べても、売上高で10.9%、営業利益で14.1%上回って着地しています。
今期(2019年1月期)の業績予想は、売上高が前期比23.6%増の30億円、営業利益も同23.7%増の3億円ですが、会社側は保守的に見積もった数値だと言っています。いったいなぜ同社が高い収益の伸びを見せているのか。ビジネスモデルをひも解いてみましょう。
古典ビジネスを先端ビジネスに
皆さんは、SKIYAKIが何をしている会社か、ご存知でしょうか。実は、ファンクラブの運営を受託している会社なのです。
アーティストのファンクラブは、そのアーティストが所属している事務所やレコード会社が運営しているように外からは見えますが、ほとんどは外部の業者に委託しています。
新規入会の受付から会費の徴収、管理、会報誌の作成・発送などの業務は、労働集約型の業務なので、これまでは会報誌の印刷を請け負う印刷会社などが受託してきました。それを、ITを駆使することで、運営業務を効率化するサービスに変貌させたのが、この会社です。
代表的なサービスが「SKIYAKI EXTRA」というサービス。ファンクラブ会員は、ファンクラブのサイト上でグッズもチケットも、そして遠隔地からライブに出かける人向けのパック旅行も購入できますし、会費を支払うことも可能です。
会員からの入金窓口はSKIYAKIが一手に引き受け、同社はあらかじめ取り決めた料率に従って、所属事務所やレコード会社にお金を支払います。所属事務所やレコード会社は初期費用やサイト構築費用も負担する必要がなく、基本データを提供するだけで、すべて任せておけばお金が入ってくるわけです。
それだけではありません。さまざまなサービスの提供を通じ、会員の行動履歴や購買履歴が収集できるので、それを元にマーケティング戦略を立て、提案もしてくれるので、委託する所属事務所やレコード会社にとっては、まさに至れり尽くせりなのです。
なぜ変わった社名なのか
そしてこの社名。やっていることと無関係のように思えますが、グローバルな視点でのビジネス創出を目指して、この社名にしたのだそうです。
SKIYAKIは故・坂本九さんの名曲「上を向いて歩こう」の海外での曲名です。日本の曲の中で唯一、全米ビルボードシングルチャートで週間ランキング1位を獲得した曲なので、この単語は海外でも通じる代表的な日本語なのだそうです。
この会社の収益源は、何といっても会員です。業務を委託してくれるファンクラブ数が増えれば増えるほど、そしてファンクラブごとの会員数が増えれば増えるほど、収入は安定し、伸びていきます。
グローバルな視点でのビジネス創出を目指している、という言葉の通り、日本のアーティストは海外にもファンがいることから、ファンクラブサイトを多言語対応にしており、現在34カ国語に対応しています。
ネックとなるのは既得権者?
今のところ競合らしい競合はなさそうですし、至れり尽くせりのサービスですから、この会社に委託しない理由がないように思えます。ネックになるのは、やはり既得権者です。
芸能界はある意味、人脈で成り立っている古い体質の業界です。SKIYAKIのサービスが素晴らしいからといって、これまで委託先として使ってきた業者を簡単に切り捨てることはできません。
もっとも、このサービスは初期費用やサイト構築費用を委託側が負担しなくて良いので、同じ趣味を持つ人同士のネットワークでこのサービスを利用することも可能です。アニメソングや漫画家のファンサークルでの利用も始まっているもよう。Jリーグやプロ野球などスポーツ分野にはまだ進出できていませんので、この辺りも伸びしろといえそうです。
一方で、決算発表翌日の3月16日終値ベースで予想PER(株価収益率)は67.80倍、PBR(株価純資産倍率)は12.12倍となっています。日経225採用銘柄の平均がそれぞれ12.74倍と1.20倍、ジャスダック平均が16.06倍と1.68倍ですから、かなりの高水準です。
株価はすでにかなりの割高ですので、SKIYAKIに投資をするなら、ここから先の成長性をどのくらい信じられるか、という判断になってきそうです。