はじめに
1927年に東京都世田谷区成城に食料品店として誕生した「成城石井」。現在160店舗近くを展開し、バイヤーが世界各地で見つけたこだわりの商品が店頭に並んでいます。
中でも専門店に引けを取らない品揃えを誇るワインは、主力商品の1つ。種類豊富なだけではなく、現地と変わらないおいしさを日本でもそのまま味わえるようにと自社輸入し、品質管理を徹底しています。
最高峰といわれる「ボルドー5大シャトー」の高価格帯のワインも扱いますが、成城石井で“買い”なのは1,000円台のテーブルワイン。価格帯問わず、品質管理に徹底的にこだわる、その秘密を探りました。
“買い”なのは1,000円台のテーブルワイン
成城石井がワインの自社輸入を始めたのは、1989年。まだ成城にしか店を構えていなかった頃から行ってきました。自社輸入を始めたのは、当時の石井社長が日本に輸入されている銘柄のワインを、現地ヨーロッパで飲んだときに、日本で飲むのとはまるで別物のおいしさだと感じたことがきっかけでした。
ヨーロッパから輸送されるワインは、船が赤道近くの海上を通るときに、熱や光にさらされたり、輸送時の振動によって味が劣化しやすくなったりするそうです。
そこで、同社では自社輸入するにあたり、冷蔵機能を持ち、長時間定温輸送が可能なリーファーコンテナを導入。輸送中はコンテナ内の温度変化を常時記録し、異常値が検出されたり、高温にさらされた時間が長いと、輸出元に返送させるほどワインの温度管理を徹底しています。
到着後の保管にも気を配ります。神奈川県高座郡寒川町にある、150万本のワインを収容できる同社の物流センターでは、低温低湿の温度帯でワインセラーの環境を再現します。天井から床までの温度変化は1度以下、湿度変化は10%以内になるようコンピューターで管理し、現地から店舗までワインを外気に触れさせずに届けているのです。
徹底した品質管理は高価なワインに限ったことではありません。店頭に並ぶワインはどれも同様の環境で扱われています。
「価格帯に関わらず、テーブルワインもきちんとした環境で管理したものを買っていただきたいと思っています」と話すのは、酒販課の星野鉄兵さん。
ただ、自社輸入となると、輸送費や管理費だけでも莫大なコストがかかります。それでも成立しているのは、同業他社をはじめ一流レストランやホテルにもワインを卸しているからだそう。
おいしさの指標「リーファー」
「当社の商品に限らず、ワインを購入するときに、ぜひやっていただきたいのはワインの裏ラベルを見ていただくことです」
リーファーコンテナで運んだワインの裏ラベルには、「リーファー」または「冷蔵輸入品」と記載されているそうです。成城石井に並ぶのは、すべてこの記載のあるワイン。「おいしいワインにたどり着きたいときの、ひとつの指標になります」と星野さんは教えてくれます。
ワインだけではなく、チョコレートやバターの含有率が高いクッキーも、リーファーコンテナーによって運ばれたあと物流センターで保管され、現地からの品質を保った状態で店頭に並んでいるそうです。
花見に合うワイン3選
一貫した管理のもとでエイジングされた成城石井のワイン。お花見の季節におすすめの1,000円台のワイン3本を、星野さんに教えてもらいました。3本すべて、女性のワイン業界関係者が世界中のワインから選び抜いた「サクラアワード2018」で、ゴールド賞を受賞したワインです。
①成城石井独占輸入品「ゾーニンアスティ」¥1,590
イタリアで最大規模を誇る、ヴェネト州の家族経営ワイナリー「ゾーニン」。「選び抜かれた上質なマスカットを使用し、アルコール度数は7%と控えめで、柔らかくすっきりとした甘さが特徴のスパークリングワインです」(星野さん)
②成城石井で10年以上人気No.1を誇る「CH ラ ヴェリエール ルージュ」¥1,690
成城石井の赤ワインの看板商品。カベルネ・ソーヴィニヨンとメルロー種をブレンドし、果実の風味と渋みが絶妙なバランスでまとまった逸品です。「ブドウは減農薬栽培のものを使用し、買付担当者がフランスで発掘した、オリジナル商品です。ラベルも共同開発しており、ボルドー地方の赤ワインらしいクラシックなイメージを基調に、金色を入れることで上質感のあるラベルに仕上げています」(星野さん)
③コンセプトは“日本の食卓に合うワイン”「2014 アッサンブラージュ ブラン」¥1,590
フランス南西部ガスコーニュ地方のワイナリー「ドメーヌシルレ」にて、毎年変わるブドウの個性にあわせてベストな配合でブレンドして作られたワイン。「フレッシュで爽やかな香りに、完熟したトロピカルフルーツの味わいが感じられ、それぞれのブドウ品種の特性が生かされています。ラベルに散りばめられたいくつもの数字は、ブレンドされている数種類の原酒の割合を表しています」(星野さん)
ワイン選びに悩んだら…
もし、どんなワインを選んだらいいか迷ったら、ぜひ試してみてほしいことがあります。それは、成城石井の店舗スタッフに聞いてみること。
「今日は○○を食べるんだけど……」「こういう味わいが好きなんだけど……」と伝えれば、どのワインが合うのか、スタッフが答えてくれます。専門性の高いワインやチーズなどについては、より知識が求められるため、成城石井ではスタッフ教育にも力を入れているそうです。
ワインはもちろん、普段何気なく手に取る成城石井の商品も、その商品に込められたこだわりを知れば、買い物がもっと楽しくなりそうです。
(文:編集部 土屋舞)