はじめに

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回はプロのFPとして活躍する横山光昭氏がお答えします。

先取り貯金をしています。お金を貯めて、マイホーム資金や教育費など、今後必要になる資金に充てたいと思っているのですが、思うように貯まりません。やりくりの仕方が悪いのでしょうか。原因を知りたいです。

毎月、夫の給料が入ると、5万円を先取り貯金しています。ですが、給料日前の一週間は生活費が足りなくなり、預金から引き出さないと生活ができません。収入が少ないせいなのかと思っているのですが、改善策はあるでしょうか。


〈相談者プロフィール〉
・女性(39歳)、既婚、夫(40歳)、子供2人(小5、小3)
・職業:専業主婦
・手取り月収:36万3,000円
・毎月の支出:38万円ほど(収支は赤字)
・貯蓄:210万円


横山: ご相談ありがとうございます。

貯蓄失敗の原因に多いのが「先取り貯蓄」

先取り貯蓄は「良い」と言われますが、実は難しいものです。「これをするとお金が貯められる」という希望論も入ってしまうので、初心者には難しいのです。

よく「先取り貯蓄しているはずなのに、お金が残っていない、貯まっていない」という話を聞きます。まさに、これがそうなのですよね。「貯蓄しているはず」という気持ちが、やりくりの仕方を惑わせます。

この原因は、現状が見えていないこと。自分たちの支出について何にいくら使っているのかが理解できていないから、「貯蓄しているはず」という錯覚が起きてしまいます。実は、貯蓄したつもりのお金をすぐさま引き出して暮らしているだけになっているということに気が付けていないのです。

“現状を把握する”とは、どうやるのか?

先取り貯蓄をうまくしていくには、現状把握が大切です。では、それをどのようにやっていくとよいのでしょうか。ポイントは数字を使って客観視をすること。つまり、支出を大まかでもよいので記録してみよう、ということです。

方法は手書きでも、アプリやパソコンソフトを使うのでも構いません。1円単位は気にせず、大雑把にでも記録してみましょう。アプリであれば、カードの利用履歴やレシートの写真撮影で自動的に記録をしてくれるので、楽に思う人もいるかもしれません。逆に手書きのほうが安心という人もいるかもしれません。手段は問いません。

1ヵ月、2ヵ月と続けていくと、ご家庭で使っている生活費の大まかな金額が見えてくるはずです。収入の中で支出は収まっているでしょうか。貯蓄する金額の余剰が出ているでしょうか。それが分からなければ先取り貯蓄は成功しません。

もし余剰が出ないやりくりであれば、支出を圧縮する方法を考え、実践していかなくてはいけません。

先取り貯蓄を成功させるには?

収入と支出の差額を把握し、安定的にでる差額分を把握できたら、それは先取り貯蓄にしても、あとから貯蓄しても構わない、家計の余剰金となります。実は、貯蓄が先取りかどうかよりも、この余剰金を作ることができるかどうかが、貯蓄をつくるためのポイントなのです。

どんな方法であれ、無理に貯蓄額を捻出して暮らしても、生活費が足りなくなって貯蓄を下ろして使ってしまえば、お金が貯まるはずはありません。お金の良くない流れができあがり、いつまでたっても貯まることはないのです。相談者さんも知らず知らずのうちに、この流れにはまってしまっていたのでしょう。

ただ、良かったのは「やっているはずなのに、貯まらない」と、気が付いて相談に来ることができたところ。頑張りと成果が伴っていないことに気が付き、疑問を感じたということは今後、変化していけるきっかけを作ったということです。

また、相談者さんとは異なるかもしれませんが、毎月先取り貯蓄をしていることで赤字になっているはずなのに、ボーナスから補填していることで気がつかない、または見て見ぬふりをしてしまうという人もいます。そして、少しでも年間で黒字が出ていればOKと考え、できなかった自分たちを見過ごしてしまうのです。

または、貯めているつもりなのに貯まっていないのに、「なぜだろう」と頭をかしげるにとどまってしまうのです。本当ならもっと貯められるでしょうに、もったいないなと感じてしまいます。

相談者さんはこの気づきをもとに、現状把握から始め、支出を圧縮し、かつ優先順位をつけてメリハリをつけていくことで、楽しい生活を維持しながら貯蓄をしていくことができるようになると思います。

まずは現状をしっかりと把握すること、これにしっかりと取り組んでください。

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